宇野良治
私の新しい勤務は皮膚科や形成外科に関係している。
『皮膚科といえば玉井先生・・・?』
大学病院時代の玉井先生を思いだした。
私の記憶では、玉井先生の父親は私の父と同じ大学の病理学教室にいたことがあり、
父の複数の論文の3つに私の父と玉井先生が並んで名前が記されているのを確認した。
玉井先生の父も皮膚科で開業して、私の父も外科で開業して、
両方の息子は医者になったが後を継がなかった。
息子の玉井先生と私が会う前、子供の頃から、父の思い出の話で、
「玉井先生」という言葉は必ず出ていた。
だから、私が息子の玉井先生と会う前から、なんとなくつながっている感じを抱いていた。
そのため、大学病院で一緒の頃、ずうずうしく私から挨拶に行ったと記憶している。
紳士的で美しい人だというのが第一印象だった。
その後、
大学で向こうから歩いてくる先生を見つけて、
「あっ、玉井先生!ちょっと見て下さい」
と、私の皮疹を”ただ”で見てもらったことがある。
その頃の私の皮疹は、境界が明瞭な赤色のかゆみを伴う湿疹で、
ステロイドや抗菌剤の効かず難治性だった。
「感染性の皮疹ではないでしょう。内因性だと思います」
『内因性?』
たとえば、デルマドロームとすれば、思い当たるので納得した。
確かにその頃は体を酷使していた。
その後、皮疹は確かに体を酷使した時に出てくることが分かった。
しかし、低FODMAP食以降は不思議と出なくなった。
『腸内細菌叢と皮疹の関係があるのか?』
ところで、
玉井先生は、今、どこにいる?と調べたところ、
大阪大学の教授になっていた。
同じ関西に住んでいたのだ。
独自に皮膚病と骨髄細胞の関係を見出し、
世界最先端の研究を行い、創薬までの過程の途中であるらしい。
動画を添付する。 相変わらず、ハンサムである。
大阪大学大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座 寄附講座教授
寄付講座とは、主に産学連携の一環として行われる取り組みです。民間の企業や行政組織などと研究機関や大学が連携し、外部の企業や組織から寄付された資金や人材を活用して研究教育を行う活動を指します。
https://www.moralogy.jp/contribution20211015/#:~:text=%E5%AF%84%E4%BB%98%E8%AC%9B%E5%BA%A7%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%B8%BB,%E8%A1%8C%E3%81%86%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%82%92%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
希少疾患の研究はお金にならないので企業は動かないのが常であるが、
寄附講座という事は、国会の超党派の難病対策議連との関係があるであろう。
自分自身で基礎医学的発見から創薬までつなげ、
その薬を完成させ、世界中の人を助け、
さらにそれを基盤として様々な疾患に応用されれば、
ノーベル賞であろう。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2020/specialite_001_5
表皮水疱症の診療を続けるなかで不思議に思ったことがあった。それは体表のほとんどの表皮を失った後でも、きわめてゆっくりだが表皮が再生していくことだ。表皮幹細胞がある基底膜ごとはがれているので、普通に考えれば表皮は全く再生できないはずである。玉井教授は「私たちの体には、どこかで大量の幹細胞が失われた場合、そこから何らかのSOSシグナルが発信され、別の組織から幹細胞を補充する仕組みがあるのではないか」という仮説を立てた。仮説が正しければ、その幹細胞に7型コラーゲンをつくる遺伝子を入れてやれば、表皮水疱症は根治できるはずだ。
さらに「SOSシグナルが伝達されるとすれば血液を介してだろう。それならば末梢の組織や他の臓器に幹細胞を補充するセンターとなるのは、白血球や赤血球などを造る骨髄細胞に違いない」と予想した。
証明のため、表皮水疱症の親友の彼に協力を仰いだ。採取させてもらった20ccの血液を玉井教授は少年からの「贈り物」と評する。自分の血液と、少年の血液をシャーレで培養。2週間後、少年の血液には、自分の血液には見られない血液細胞のコロニーが多数みつかった。コロニーの発見が示唆するもの、それは極めて高い自己複製能力を持つ「幹細胞」の存在だった。
この幹細胞をゲノムレベルで解析すると、骨髄の中にいて、表皮幹細胞と同じ外胚葉由来の間葉系幹細胞であることが確認された。「外胚葉由来」であるということは、この間葉系幹細胞は骨や軟骨だけでなく、中枢神経にも表皮にもなれるということ。それが骨髄にプールされていることが明らかになった。
さらに研究を進めると、表皮が大量にはがれると、壊死した細胞の核から「HMGB1」と呼ばれる核タンパクが血管内に放出され、それがSOSシグナルとなって骨髄内の間葉系幹細胞を血液中に導きだすことが分かった。「壊死」によって「HMGB1」が血中に増えることがキーだったのだ。血管内を遊走する幹細胞は、損傷した細胞が分泌するSDFー1αという物質を目印にして集積する。傷ついた組織が、骨髄の間葉系幹細胞の助けを借りて、機能の再生を誘導するメカニズムが明らかになった瞬間だった。
メカニズムが明らかになったことで、治療への二つの道筋が見えた。一つ目はSOSシグナル物質・HMGB1により血液中におびき出した間葉系幹細胞に、7型コラーゲンを造る正常な遺伝子を組み込み、もとに戻してやること。正常化した幹細胞が皮膚に定着すれば根治が期待できる。二つ目はシグナル物質の投与で、より多くの幹細胞を血液中に動員してやること。患者の幹細胞には7型コラーゲンを造る遺伝子がないので、残念ながら根治はしないが、症状はぐっと改善する。「傷が悪化するスピードより、治るスピードを早めてやればQOL(生活の質)は良くなる」という発想だ。一つ目の方法は動物実験の段階だが、二つ目はいくつもの壁を越えて、2018年1月に表皮水疱症患者を対象にした臨床研究へと至り、2020年1月、良好な結果が報告された。
再生誘導医薬への関係者の関心は高く、「今までにない薬ができる」と創薬を強く勧める声もあった。だが医学研究者だけでは特許取得や製薬会社との提携などは手に負えない。幸い創薬経験の豊富なエキスパートの協力が得られることになり、2006年、阪大発の創薬ベンチャー企業を設立した。現在の会社名「ステムリム」は「幹細胞(Stem cell)」と「再生誘導医療(Regeneration-Inducing Medicine)」に由来する。
当初は資金が足りず、何度も行き詰まりそうになった。だが大手製薬会社との提携が実現し、経営は安定し、研究員を雇用し続けることができた。基礎研究をもとにベンチャーがうまれ、研究が進み、成果が社会実装され、新たな課題が見つかり、また研究が進むというサイクルは、研究室単位での小さな研究開発エコシステムだと玉井教授はいう。
大手製薬会社が共同研究に踏み切ったのは、HMGB1が持つ可能性の高さからだ。この核タンパクは生体内のすべての細胞の核内に存在している。だとすれば壊死した組織に外胚葉由来の幹細胞を動員して修復する再生誘導メカニズムは、皮膚だけでなく、あらゆる臓器や組織に共通していると考えられる。国内の患者数約1,000人とされる表皮水疱症だけでなく、ケタ違いに患者の多い脳梗塞や心筋梗塞、再生が難しいとされている膝軟骨の再生などへの適用が期待される。しかもHMGB1の活性ドメインはペプチドとして化学合成できコストを抑えられるうえ、生体内のメカニズムを利用するため安全性が高い利点もあるからだ。2019年には、すでに脳梗塞をターゲットにした企業治験も実施されている。
これまでにない再生誘導医薬への道を開いた玉井教授は「HMGB1は抗生物質に例えれば発見されて間もないペニシリンみたいなもの。同じような働きをする分子はまだまだあるはずで、その一つ一つが薬のターゲットになる。再生誘導メカニズムの分子基盤を解明し、新しい薬をだして患者さんに還元することが阪大の責任」と話す。
少年との約束の日から、いくつもの壁を越えた先に漸く辿り着いた「再生誘導」のメカニズム。
その物語は、まだ序章だ。
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もしかしたら、頭皮の毛根を再生させる薬も出てくる可能性がる。
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もしかしたら、頭皮の毛根を再生させる薬も出てくる可能性がる。