宇野良治、医師、医学博士
Office Uno Column
ひき続き、再公開します。
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初回公開日:2014年10月26日
乳酸菌製剤(プロバイオティクス)が有効とする研究論文の検証
宇野良治
プロバイオティクス(Probiotics)とは人体に良い影響を与える微生物、または、それらを含む製品、食品のことであり、日本では主に乳酸菌飲料を示す。乳酸菌飲料を人間に直接飲ませる研究は、味、質などで、何を飲んだかわかってしまうため、プラセボ効果(いいと思い込んで良くなる)があるため、プロバイオティクスが有効か、無効かの研究には、乳酸菌などの有効とするそのものだけが入ったカプセルと入っていないカプセルを飲ませて、対象者が何を飲んでいるのかわからない条件の研究で有効性が確かめられなければならない。
前回、そのような研究で、プロバイオティクスが無効であるという研究を紹介した。
では、それとは、反対に、有効であるとする研究報告はどのようなものであるか調査した。。
過敏性腸症候群に対して、乳酸菌をはじめとするプロバイオティクスが有用であるとする
代表的論文を検証する。
<<<論文1.>>>
A randomized controlled trial of a probiotic combination VSL# 3 and placebo in irritable bowel syndrome with
Bloating Neurogastroenterol Motil (2005) 17, 687–696
H. J. KIM,*1 M. I. VAZQUEZ ROQUE,*1 M. CAMILLERI,* D. STEPHENS,* D. D. BURTON,* K. BAXTER,* G. THOMFORDE* & A. R. ZINSMEISTER
*Clinical Enteric Neuroscience Translational and Epidemiological Research (C.E.N.T.E.R.) Group, Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, MN, USA
Division of Biostatistics, Department of Health Sciences Research, Mayo Clinic College of Medicine, Rochester, MN, USA
目的:過敏性腸症候群(IBS)と有意な膨満感を有する患者における併用症状に対するプロバイオティックおよび結腸通過の効果を評価する。
方法:ローマII IBS患者の48人の患者は、無作為に割り付けられたが、一日二回、プラセボまたはVSL#3の二重盲検デザイン(31人の患者は4週間と17人の患者の治療の8週間を受け取った)。治療前および治療後結腸通過の測定はシンチグラフィーを用いて行った。症状は、治療の最初の4週間の全期間、治療の別途のため一日平均スコアとしてまとめた。また、週間での腹部膨満の満足度を評価した。
結果:VSL#3治療は(VSL#329.7±2.6、P =0.011対プラセボ39.5±2.6)は、全治療期間にわたって鼓腸の減少と関連していた。同様に、治療4週間後の鼓腸スコアも(プラセボVSL#330.8±2.5対40.1±2.5、P =0.014)減少した。膨満感、便関連の症状、腹痛や膨満感スコアの割合は差がなかった。結腸通過は(2.27±0.20対0.19±2.83、P = 0.05、それぞれコロン幾何学的中心)プラセボとのVSL#3と比較して抑制された。
<コメント>
鼓腸だけが抑制されて、通過時間が延長したということである。
つまり、便秘傾向になったが、ガスが減った感じがしたという結果である。
最近の世界的見解は、大腸内発酵が多ければ、ガスが増加して、過敏性腸症候群の症状が悪化するといのがコンセンサスであるため、この鼓腸の改善の信憑性が問われるが、p=0.01であり、p<001を有意差とすると、これについても「効果なし」と判断できるデータである。
驚くべきことは、便の性状も、便回数も、腹痛も変化がなかったということである。
プロバイオティクスで、便の性状が変わらないのであれば、ヨーグルト推進者の言う根幹が崩壊する。
これは、ヨウーグルトよりも、乳酸菌飲料よりも進化しているはずの
プロバイオティクスが有効とする代表的な論文であるが、
論文の表をみれば、ボロボロの結果だとわかる。
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<<<論文2.>>>
Ki Cha B, Mun Jung S, Hwan Choi C, Song ID, Woong Lee H, Joon Kim H, et al. The effect of a multispecies probiotic mixture on the symptoms and fecal microbiota in diarrhea-dominant irritable bowel syndrome: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. J Clin Gastroenterol. 2012;46:220–7.
過敏性腸症候群(IBS)に対するプロバイオティクスの臨床効果は、まだ議論の余地がある。
目的:
私たちは、IBSの症状に対するプロバイオティクス混合物や下痢優性IBS(D-IBS)患者における糞便細菌叢の組成物の効果を評価することを目的とした。
方法:
D-IBSに50人の患者は、プラセボまたはプロバイオティクス混合物(ラクトバチルス·アシドフィルス、ラクトバチルス·プランタラム、ラクトバチルス·ラムノサス、ビフィドバクテリウムブレーベ、ビフィドバクテリウム·ラクティス、ビフィドバクテリウム·ロンガム、およびストレプトコッカス·サーモ1.0×10 CFU)とに無作為のグループ分けされた。治療は8週間毎日採取した。主要転帰は10週間毎週評価し、全体的なIBS症状の十分な緩和(AR)を評価した。10週間の研究期間の少なくとも半分ARを経験した患者を有効として定義した。他の検討項目には、個別の症状、糞便パラメータ、および生活のIBSの質への影響が含まれていた。糞便叢の組成物は、濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を変性ポリメラーゼ連鎖反応によって分析した。
結果:
ARの割合は、10週間の期間(P <0.05)を通じてプラセボ群よりもプロバイオティクスグループにおいて一貫して高かった。応答者の割合は、プラセボ群(48%対12%、P = 0.01)に比べてプロバイオティクスグループにおいて有意に高かった。便の硬さは、プラセボ群と比較してプロバイオティクス群で有意に改善した。個別の症状スコアにおけるパーセント変化は、2群で同等であったが、生活改善のIBS品質はプロバイオティクス群では高い傾向にあった。糞便叢の勾配ゲル電気泳動プロファイル変性の比較は、処理前と処理後の細菌の組成物間の一致率は、プラセボ群(69.5%対56.5%、P = 0.005)よりもプロバイオティクスグループにおいて有意に高かったことを示した。
結論:
それは個別の症状に有意な影響を及ぼさなかったが、プロバイオティック混合物が、全体的なIBS症状およびD-IBS患者の便の硬さの改善と症状の緩和を提供するのに有効であった。プロバイオティクスの治療効果は、腸内微生物叢の安定化と関連している。
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<コメント>
個々の症状が何ひとつ改善しなかったにもかかわらず、
生活が改善したということに理解が出来ない。
その改善(症状緩和)の定義によって、有効とでも無効とでも導ける方法を用いている。
そのため、生活の改善という、いい加減な指標よりも、より客観的な個々の症状の指標を重視すべきである。
このような研究が多いために、IBSでは、完全な客観的指標を求められているだ。
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<<<論文3.>>>
Williams EA, Stimpson J, Wang D, Plummer S, Garaiova I, Barker ME, et al. Clinical trial: A multistrain probiotic preparation significantly reduces symptoms of irritable bowel syndrome in a double-blind placebo-controlled study. Aliment Pharmacol Ther. 2009;29:97–103.
多種菌混合のプロバイオティクスは二重盲検、無作為化、プラセボ対照研究試験で過敏性 腸 症候群(IBS)の有効性症状緩和する
目的:プロバイオティクスであるLAB4のIBS への効果を調べる。
方法:ローマII基準によって定義されたIBSを有する52人の参加者に対して、二重盲検、無作為化、プラセボ対照研究を行った。
ラクトバチルス·アシドフィルスCUL60(NCIMB 30157)とCUL21(NCIMB 30156)、ビフィドバクテリウム·ラクティスCUL34(NCIMB 30172)およびビフィドバクテリウムビフィダムCUL20(NCIMB 30153)
を含んだプロバイオティクス(2.5×10 cfu /カプセル)またはプラセボのいずれかに無作為に割り付けされ、8週間投与した。参加者は、IBSの症状を投与後2週毎にアンケートを使用して経過を観察した。
結果:プロバイオティクス はプラセボ群よりIBSの症状スコアにおいて、生活の質のスコアが有意な改善は、腹痛と排便習習慣の改善が介入期間で観察された。
結論:LAB4 プロバイオティクスサプリメントはIBSに利益を得ることができる。
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<コメント>
抄録だけでは、非常に効果があるように思える。
しかし、実際のデータは以下である。
効果があるとしたQOLや排便習慣の改善のデータでも、10週間のうち、わずかに2週間だけの軽快であり、腹痛の程度や腹部膨満ではプラセボとは統計学的に違いはなかったのである。
そして、全体の症状であっても、6週と8週のみにやや効果はあったが、2週、4週、10週では効果がなかったのである。このデータで、プロバイオティクスが有効とするか、無効とするかは、発表する人の主観による。
このデータが本当だとしても、
簡単に結果を言うならば、飲み続けていると、
わずかな期間だけ、症状が緩和することがあるかもしれない。
ということである。
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<<<論文4.>>>
Kajander K, Hatakka K, Poussa T, Färkkilä M, Korpela R. A probiotic mixture alleviates symptoms in irritable bowel syndrome patients: A controlled 6-month intervention. Aliment Pharmacol Ther. 2005;22:387–94..
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背景:過敏性腸症候群は、未知の病因の胃腸障害である。この症候群におけるプロバイオティクスの効果は不明なままである。
目的:プロバイオティクス混合物(ラクトバチルスラム、GGのLを ラムノサス LC705、ビフィドバクテリウムブレーベ BB99およびプロピオニフロイデン SSP、shermanii JSを含む)が過敏性腸症候群の症状を緩和するのに効果的であるかどうかを調べる。
方法:ローマIまたはII基準を満たす合計103人の患者は、6か月間、無作為化、二重盲検プラセボ対照試験に参加した。患者は毎日プロバイオカプセルまたはプラセボカプセルを受け取った。胃腸症状および排便習慣を記録した。
結果:最後の総症状スコア(腹痛+ 膨満+膨満鼓腸+腹鳴)は、プロバイオティクス群で7.7(95%CI:-1.6から-13.9)ポイント減少した(P = 0.015)。プラセボ群の6%と比較してプロバイオグループの症状スコアの42%の中央値の減少があった。個々の症状では、腹鳴はプロバイオティクス群で中軽度有効(P = 0.008)で、残り症状は統計学的に差がない傾向であった。
結論:結果は、このプロバイオティック混合物は、過敏性腸症候群の症状を緩和するのに有効であることを示している。過敏性腸症候群の有病率が高く、効果的な治療法がないことを考慮すると、症状のわずかな減少は、正の公衆衛生への影響を持つことができる。
<コメント>
この研究はフィンランドからの報告であるが、Valio Ltd, Research & Developmenという、フィンランドの乳製品メーカーから資金補助された研究である。ベースラインの基礎データがなく、補正されたデータだけでの比較である。つまり、プレバイオティクスとプラセボとの同一傾向があるのかが示されていない。としても、各症状の中で腹鳴だけが改善したという内容である。
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<<<論文5.>>>
Kajander K, Myllyluoma E, Rajilić-Stojanović M, Kyrönpalo S, Rasmussen M, Järvenpää S, et al. Clinical trial: Multispecies probiotic supplementation alleviates the symptoms of irritable bowel syndrome and stabilizes intestinal microbiota. Aliment Pharmacol Ther. 2008;27:48–57.
背景:過敏性腸症候群は、胃腸病学における最も一般的な診断である。特定のプロバイオティクスが有益であるか試験する。
目的:複数種のプロバイオティクスサプリメント(ラクトバチルスラム GG、L.ラムノサス LC705、プロピオニフロイデン SSPshermanii JSとビフィドバクテリウム·アニマリス SSPを。ラクティス BB12を含んだ)の効果を調べるために、腹部症状、生活の質、腸内細菌叢および過敏性腸症候群における炎症マーカーを調べた。
方法:86人の過敏性腸症候群患者(ローマII基準)は、この無作為化、プラセボ対照5ヶ月の介入に参加した。患者は、毎日複数種のプロバイオティクスサプリメントまたはプラセボのいずれかに無作為に割り付けた。過敏性腸症候群の症状は、生活、マイクロアレイベース腸の微生物叢の安定性(n = 20)、血清サイトカインおよび敏感なC反応性タンパク質をモニターした。
結果:複数種のプロバイオティクスはプラセボよりも過敏性腸症候群のスコアが5ヶ月で14ポイント(-19 -9 95%CI)を減少した(P = 0.0083)。特に、膨満および腹痛が影響を受けた。プロバイオティックサプリメントで微生物叢の安定化が観察された。差異はC反応性タンパク質では見られなかった。
結論 この複数種のプロバイオティクスは、過敏性腸症候群の症状を緩和し、腸内細菌叢を安定化させるために効果的で安全な選択肢であると思われる。
<コメント>
この論文は、前述した論文と同じ著者である。前述の論文でデータが示されていないという私と同じことを言った人がいるのかわからないが、3年後の論文では、ベースラインが記されている。
有意差をp<0.01で線引きすると、
なんの有効性もないのである。
有意差をp<0.05としても、
主観的な鼓張と鼓鳴であり、客観性に乏しい。
そして、客観的な炎症マーカーに変化はなかった。
そもそも、この研究者らは、どうして腹痛や腹部膨満を生じるのか?
どう、考えているのか。まったくわからないが、炎症だとするなら、
客観的証拠がなかったということである。

さらに、他の因子をみても、
ほとんど、プラセボと変化がないのである。
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以上のように、
過敏性腸症候群にプロバイオティクスが有効であるという、代表的な論文を5つ検証したが、
非常にがっかりする内容である。
少なくとも、現在、排便困難、便秘、下痢、腹痛などの、お腹の症状がある人の場合、
ほとんど効果は期待できないと結論したい。
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