宇野良治、医師、医学博士
Office Uno Column
今から8年前の2014年10月に、
「おなかの調子を整える」 トクホを信じるな①~⑧
を連載した。
その後、身の危険を感じ、下書きにして非公開にしたが、
それから8年、私の主張が科学的に多くのエビデンスで証明された。
そして、今回の本の出版の前に、
全て、再公開する。
(元の記事を若干訂正した部分もあります)
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初回公開日:2014年10月21日
開かれたパンドラの箱:農学者たちの「定説」の矛盾
宇野良治
人間の消化管のpHを測定するカプセルの開発によって、
これまで、人が排泄した便と動物実験だけで、想像(妄想)されていた「定説」と逆説的な実際の病態がわかってきました。

スマートピルの動画
https://www.youtube.com/watch?v=mecULFc94jo
2014年、米国消化器病週間で米国の研究グループから以下の発表がありました。30 人以上の過敏性腸症候群のpHを測定したという世界で初めてのデータです。
Gastroenterology Volume 146, Issue 5, Supplement 1, Page S-8, May 2014
http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(14)60028-7/pdf
Altered Colonic Bacterial Fermentation Is a Steadfast Pathophysiological
Factor in Irritable Bowel Syndrome
Chang Hwan Choi, Tamar Ringel-Kulka, Daniel J. Temas, Ari Kim, Karen Scott, Yehuda Ringel
Background: Irritable bowel syndrome (IBS) is considered a multifactorial disorder for which the pathophysiology is not completely understood. Dysbiosis of the gut microbiota leading to abnormal intestinal fermentation has been suggested as a possible etiological mechanism.
However, there are insufficient data to support this hypothesis. Aim: To investigate the location and magnitude of altered intestinal intraluminal bacterial fermentation in IBS and its clinical subtypes Methods: Thirty-eight IBS patients who satisfied Rome III criteria and 46 healthy controls (HC) were investigated. Intestinal fermentation was assessed using two surrogate measures: Intestinal intraluminal pH and fecal short chain fatty acids (SCFAs).
Intraluminal pH levels were measured at four quartiles Q1-4 of the small and large bowel using a wireless motility capsule (SmartPill™). Fecal SCFAs including acetate, propionate, butyrate and lactate were analyzed by capillary gas chromatography. Comparison between IBS and HC were done using student t-test. Correlations between intestinal pH, fecal SCFA, intestinal transit time and IBS symptom severity score (IBS-SSS) were done using Pearson correlation coefficient (PCC) test. Results: I. Mean total colonic pH levels were significantly lower in IBS (n=38) compared to HC (n=9) (6.71 for IBS vs. 7.37 for HC, P < 0.05). The colonic pH levels at the first quartile were the lowest among the four quartiles in both groups . II. There were no differences in total and segmental pH levels in the small bowel between IBS and HC (6.77 vs. 6.90, respectively, NS). III. The intraluminal colonic pH differences were consistent in all IBS subtypes. IV. Lactate was significantly higher in IBS (n=35) compared to HC (n=37) (4.44 for IBS vs. 2.55 for HC, P = 0.035); there were no significant differences between the groups in other SCFAs and total SCFAs. V. Colonic pH levels positively correlated with IBS symptom severity scores (PCC = 0.503, P = 0.01) and a similar trend was noted for abdominal pain (PCC = 0.380, P = 0.061). IBS symptom severity and abdominal pain scores did not correlate with small bowel pH levels or fecal SCFAs. Conclusion: Altered intestinal fermentation in IBS appeared to be in the large but not in the small bowel. Colonic bacterial fermentation is significantly increased in all subtypes of IBS compared to HC and is more prominent in the proximal colon. Altered bacterial fermentation correlates with IBS symptom severity. Our study provides evidence for an important etiological role for altered colonic bacterial fermentation in the pathogenesis of IBS.
<抄録の和訳>
背景:過敏性腸症候群(IBS)の病態生理は完全には理解されていない多因子性の疾患と考えられている。異常な腸内発酵に至る消化管の微生物叢の腸内毒素症は、可能な病因メカニズムとして示唆されている。しかし、この仮説をサポートするための十分なデータがある。
研究方法:ローマIII基準を満たした38人のIBS患者と46人の健常対照(HC)を対象とした。IBSの臨床サブタイプに分類して、腸内細菌発酵の程度を評価するために。腸管腔内pHおよび糞便の短鎖脂肪酸(SCFA)を指標とした。腸腔内pHレベルは、ワイヤレスpH測定カプセル(SmartPill™)を使用して、小腸および大腸の4領域(Q1-4)を計測した。酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩および乳酸塩を含む糞便のSCFAは、キャピラリーガスクロマトグラフィーで分析した。
統計処理:IBSとHCとの間の比較は、スチューデントt検定を用いた。腸内のpH、糞便SCFA、腸の通過時間とIBS症状の重症度スコア(IBS-SSS)の間の相関はピアソンの相関係数(PCC)検定を用いて行った。
結果:1).総結腸pHレベルの平均は、HC(N= 9)で7.37、IBS(n =38で)は6.71であり、IBSで有意に低かった(P <0.05)。結腸のpHレベルは両群ともに最初の区域が最も低かった。
2)小腸のpHレベルは、IBSとHCの間の(6.77対6.90、NS)には差はなかった。
3)結腸のpHの違いは、すべてのIBSサブタイプ(下痢型、便秘型、混合型)で同じであった。
4)乳酸の値はIBS(n =37)で4.44、HC(n =35)で2.55であり、IBSで有意に高かった(P=0.035)。他のSCFAと総短鎖脂肪酸では有意差は認められなかった。
5)結腸pHレベルの相違とIBS症状の重症度スコア(PCC=0.503、P= 0.01)に相関を認めた。同様の傾向は腹痛(PCC=0.380、P=0.061)でもみられた。 IBSの症状の重症度および腹痛スコアは小腸のpHレベルまたは糞便のSCFAと相関しなかった。
結論:IBSで腸内発酵は小腸ではなく大腸で行われることが主であるように思われた。結腸細菌発酵がHCに比べてIBSの全てのサブタイプで増加し、近位結腸においてより顕著である。細菌の発酵の変化は、IBSの症状の重症度と相関する。私たちの研究は、IBSの病因における変化した結腸細菌による発酵のための重要な病因的役割についての証拠を提供するものである。
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大腸内の腸内環境は、
便秘であっても、下痢であっても、過敏性腸症候群では、pHは健常者より低いのです。さらに、大腸の状態が不良の人では、乳酸と短鎖脂肪酸が増えているのです。
つまり、短鎖脂肪酸が多くても、pHを低くしても便通異常であるということです。
私が、問題視しているのは、この米国の研究の結果と、
特定保健用食品である「乳酸菌飲料」の効能書きと矛盾していることです。
乳酸菌飲料を飲むと便通が良くなるという「定説」は以下です。これは、人間の腸とは機能も形も異なる動物(ラットなど)での実験や、乳酸菌飲料をたくさん飲ませた後に排泄された便の測定結果による推察でした。
(図)
しかし、上記論文から人間の腸管での実験では以下のように導かれます。
(図)
さて、
独立行政法人 国立健康・栄養研究所のHPで、
「お腹の調子を整える」等の表示をした食品
のなかに、「乳酸菌を含む食品」があります。
たとえば、ある会社の製品説明では、次のように記されています。
「○○○は、人工消化液に対する耐性が高く、実際にヒトが摂取した場合、生きたまま糞便から回収されることから、本菌株は生きたまま消化管下部に到達すると考えられる。このように本菌株は、生きたまま消化管下部に到達した後、乳酸の産生や菌株表面への物質吸着などに起因すると考えられる作用によって、腸内菌叢の改善(有用菌の増加と有害菌の減少)、便性改善 (便秘、下痢の改善や糞便pHの低下) 、腸内有害産物の抑制が発揮されるものと考えられている。」
とあります。
pHが低ければ便秘や下痢になるという、米国の研究報告と矛盾しています。
この説明で注目したいのは、「・・・考えられている」です。
誰が、考えているのでしょう?
また、ある会社の製品の説明
では、次のようにありました。
「○○株、○○株は、生きて腸内に到達し、○○株は腸壁に接着している有害菌を排除することにより、○○株は乳酸を活発に生成して、有害菌の増殖を抑制することにより腸内環境を改善する。また、○○株、○○株の生成した乳酸が腸壁を刺激してぜん動運動を促進し、排便回数が増加して便通の改善がもたらされると考えられる。」
この説明も、先の、米国の研究報告とはパラドキシカルです。
乳酸や短鎖脂肪酸はラットの蠕動運動を亢進する作用があるが、大腸の区域によってはかえって抑制されることがわかっています。
Dass NB, John AK, Bassil AK, Crumbley CW, Shehee WR, Maurio FP, Moore GB, Taylor CM, Sanger GJ. The relationship between the effects of short-chain fatty acids on intestinal motility in vitro and GPR43 receptor activation. Neurogastroenterol Motil. 2007;19:66–74.
この説明でも注目したいのは、「・・・考えられている」です。
また、ある会社の製品 では以下のように記されています。
「[研究の対象]健常な女子学生 (平均年齢19.7±0.7歳) 。[方法および結果]B.lactis FK120株含有発酵乳摂取が排便回数、便性状、糞便内菌叢、糞便水分量、pHおよびアンモニア量に及ぼす影響を検討した。試験は全50日を5期に分け、試験食としてB.lactis ○○株含有発酵乳を1日に100 mL (B. lactis ○○株を109 cfu/ml以上含む) を、対照食として成分無調整牛乳を1日100 mL、10日間ずつ摂取させるクロスオーバー試験により実施した。その結果、試験食摂取により対照食と比較して、排便量の有意な増加、便性状の改善が認められた。菌叢に対するBifidobacteriumの占有率は増加し、Clostridium perfringensの検出率は減少した。さらに、糞便内pHの低下、糞便水分量の増加およびアンモニア量の減少が認められた。試験食摂取期と非摂取期との比較においても同様の結果が得られ、特に、排便回数の増加、Bifidobacteriumの菌数の増加が認められた。以上の結果から、B.lactis ○○株含有発酵乳の摂取により糞便内菌叢を改善し、便通を促進することが明らかとなった .」
この研究の最も理解できないのは、健常な女子学生を対象としながら、結果で「便性状の改善」が得られたということです。健常な対象で「便性状の改善」という意味がわかりません。健常でない人の便が改善したというのであれば意味は通るでしょう。しかし、健常者の実験です。これは、定義による結果の操作方法、つまり、「より良い便」の定義しだいで、いくらでも都合のいい結果を導ける研究手法なのです。そして、極めつけは便内のpHが低下したということです。もし、この結果が本当であるならば、米国学会報告の結果からみて、健常な人であっても、乳酸菌を摂取すると、過敏性腸症候群になる危険があるということです。
さらに他の会社の製品の説明
は以下です。
「試験管内の実験では、○○菌の菌体抽出液、または○○菌により調製したヨーグルトホエーを1%添加することにより、ビフィズス菌の増殖が促進された。また、○○菌により調製されたヨーグルトを、大腸菌またはクロストリディウム菌の培養液に添加すると、それぞれ、有害物質であるインドール、アンモニア、およびフェノール生成の抑制が観察された。さらに、LB81菌により調製されたヨーグルトを健康成人に投与した場合、排便回数・排便量の有意な増加、適正な便性状の出現頻度の顕著な上昇、排便時のスッキリ感の明らかな増大、糞便中のビフィズス菌の増加とクロストリディウム菌の減少、腸内腐敗産物であるアンモニア、硫化物、インドール、p-クレゾールの低下と糞便pHの低下、臭気の緩和などが観察された。以上のことから○○菌により調製されたヨーグルトの摂取は、腸内細菌のバランスを整えて、おなかの調子を良好に保つことが示された。」
前述したように、健常者では過敏性腸症候群になる危険があるということです。
これまで、日本で乳酸菌を推奨してきたのは、医学者ではなく、農学者です。
動物実験と、排泄された便だけの研究です。
実際に患者をみている医者、医学者は何をしていたのでしょうか?
皆、おかしいと思いながら、何故、医学者は何も検証せずにいたのでしょうか?
なぜ、このようなオカルト的な妄想的「定説」がまかり通ったのでしょうか?
さらに、検証してゆきます。
追伸:
すでに、無効性を示す研究報告が急増しています。
関連会社は、「お腹にやさしい」を急に撤回すると社会問題、経済混乱を引き起こす危険性があるので、「お腹にやさしい」というキャッチコピーを使用しないようにしてフェーズアウトし、乳酸菌の他の利点の研究を急いでください!
官庁は、社会混乱をもたらす負の政策を行わないようにしてください。
科学でない「定説」は、科学で追及される運命にあるのです。
2014年10月21日
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いかに河野太郎大臣であっても、ここには手を付けられないと思うので、
地道に「危険性」を伝えるしかない。
2022年9月25日 宇野
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