日本低フォドマップ食推進会
会長 宇野良治、医師、医学博士
Office Uno Column


 

古代小麦についての論文が蘭独西日斯伊米英仏の世界中の研究者の連名で、

20226月に公開されました。

 

この論文の図については、2022年3月に記した図を使用しています。

声明:スペルト小麦について(追記)

http://blog.livedoor.jp/yoshiharu333/archives/56540672.html

 

今回は、さらに詳しく説明します。

 

Brouns F, et al. Do ancient wheats contain less gluten than modern bread wheat, in favour of better health? Nutr Bull. 2022 Jun;47(2):157-167.

概要

人気のあるメディアのメッセージは、グルテンを含む食品が健康に悪いという一般の認識を高めています。並行して、「古代穀物」は、グルテンが少ないという主張で宣伝されてきました。「古代穀物」の明確な定義はないようですが、この用語には通常、アインコーン小麦、エンマー小麦、スペルト麦、ホラサン小麦が含まれます。グルテンはすべての小麦粒に存在し、すべてが遺伝的に感受性のある個人にセリアック病 (CD) を誘発する可能性があります。「古代の」小麦と「現代の」小麦の分析は、現代のパン用小麦のタンパク質含有量は時間の経過とともに減少し、デンプン含有量は増加しました。さらに、パン小麦と比較して、古代小麦はより多くのタンパク質とグルテンを含み、多くのCD活性エピトープの含有量が多いことが示されました。したがって、CD のリスクを軽減する、またはCDの重症度を軽減するために、単一の小麦タイプを推奨することはできません。西側諸国の人口の推定10%が、明確な器質的な原因がなく、しばしば過敏性腸症候群 (IBS) と呼ばれる胃腸症状に苦しんでいます。これらの患者の多くは、自分自身がグルテン過敏症であると思い込んでいますが、ほとんどの場合、これは医療現場で検査しても確認されません。代わりに、小麦に含まれるフルクタンの発酵によるガス形成、または一部の患者では非グルテンタンパク質の影響が原因である可能性があります。CDの症状とかなりの重複があり、IBS および炎症性腸疾患では、医学的診断が優先されます。今回の批判的なレビューは、「古代」小麦の種類が健康とより良い耐性のために好ましいという指摘を否定するものです。

はじめに

近年、一般書籍やソーシャルメディアにおいて以下が指摘されている。

l  現代のパン用小麦やデュラム(パスタ)用小麦を使用した製品に含まれるグルテンを摂取すると、様々な悪影響が生じ、肥満を含む慢性疾患の一因になる。

l  「普通小麦」とも呼ばれるパン用小麦(Triticum aestivum)の現代種は、いわゆる「古代小麦」と比べてグルテンの含有量が多い。

l  現代の小麦に含まれるグルテンは消化が悪く、小腸内に部分的に消化されたタンパク質断片が存在し、セリアック病(CD)の腸管病理に関与したり、神経変性疾患(グルテン失調症)と関連したりしている。

l  統合失調症、うつ病、アルツハイマー病、自閉症などの慢性脳疾患の悪化にグルテンが関連している(Davis, 2012; Perlmutter, 2014)。

 

このような主張は、確かな証拠がないために正当化できないことが示されているが(Miller-Jones, 2012)。それにもかかわらず、社会的・一般的メディアにおける激しい宣伝により、グルテンを含む食品はすべての人が避けるべきであるという認識が広く一般に定着してしまったのである。

そこで我々は、「古代」小麦は現代のパン用小麦よりもグルテン含有量が少なく、CD活性ペプチド(エピトープ:免疫系に認識されるアミノ酸配列の特定領域を含むペプチド)も少ないため、より健康的な選択肢であるという提案を批判的に検討することにした。私たちは、ソーシャルメディアにおける主張と提案に、現在の科学的根拠があるのかについて検討した

 

古代小麦は現代パン小麦よりグルテンが多い

同一条件下で栽培、収穫、製粉された150 品種の小麦の広範な組成分析では、小麦のタンパク質含有量が古いタイプから現代のタイプまでの間に減少した。この減少は、より高い収量の原因であるでんぷん含有量の増加と関連している。グルテンは小麦タンパクの7080%を占めるため、古代小麦ではグルテンが多く、それに比して現在のパン小麦はグルテン量が少ない。

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そして、グルテン量が最も多い古代小麦はスペルト小麦である。

 

古代小麦にはグリアジンが多い

グルテンタンパク質は、グリアジンとグルテニンの 2 つの分画で構成されている。グルテニンはパン生地の弾力性とパン作りの品質を決定する。グリアジンは腸内で有害反応を引き起こす可能性のあるタンパク質消化(ペプチド)から生じるフラグメントのより重要な供給源であり、遺伝的に感受性のある個体において免疫反応性およびCDの発症を引き起こす。最近の研究では、グリアジンとグリアジンに存在する多くの CD 活性エピトープの存在量が、現代の小麦と比較して古代の小麦の方が高いことが示されている。

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Pronin らによる2021年の研究では、古いコムギ品種と現代のコムギ品種のCD活性ペプチドの含有量の範囲が重複していることを確認し、古い品種の免疫反応の可能性が現代の品種と比較して低くないことを示した。これらから、単一の小麦タイプがCDの減少または緩和に優れている、またはより安全であるとして推奨されることはないと結論付けることが出来る。

「グルテン不耐症」という用語が「グルテンアレルギー」と同様の意味でしばしば不適切に使用されるが、「セリアック病」、「小麦アレルギー」、「非セリアック小麦過敏症」という特定の用語を使用すべきである。

近年、小麦の摂取に関連する腸および非腸の症状(頭痛、睡眠不足、不安、うつ病など)のクラスターは、グルテンの存在に起因し、非セリアックグルテン感受性(NCGS)として説明された。グルテンを含む食品を避けることで症状が緩和されることが示され、グルテンが原因因子であると示唆された。しかし、追跡調査では、グルテンが原因ではなく、フルクタン (フルクトースの鎖からなる急速に発酵可能なオリゴ糖または多糖類のクラス)であることが示されました。これはFODMAPと知られている成分である。フルクタンやその他のFODMAPは、ガス形成、浸透圧流体増加、および腸の膨満感により、胃腸症状を引き起こす可能性があり、これらの症状は FODMAP摂取量を減らすと、大幅な軽減がもたらされることが示されている。すなわち、小麦のグルテンではなくFODMAPが「感受性」を引き起こす可能性がある。

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この論文には2つの重要な内容があります。

 

1)     古代小麦は現代のパン小麦よりもグルテン量が多く、グルテンアレルギーでは摂取すべきではない。

2)     グルテンフリーで症状が軽快するのはアレルギー以外では、フルクタン除去による影響である。

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古代小麦のグルテンは現在のパン小麦のグルテンより少ない、あるいは、近代小麦のグルテンよりも毒性が少ないと思い込んでいる人がいます。

こういう場合は最近の研究結果による知見ではなく、すでに否定されている一時期の古い研究をもとにしていることが多いのです。

 

ということで調査すると以下の論文が存在します。

 

1)     2005年:Gastroenterology2005 Feb;128(2):393-401.

グルテンの全体的な免疫反応性に対する相対的な寄与は、AABB、および DD ゲノムにコードされたグリアジンタンパク質の間で大きく異なる。

 

2)     2005年:Theor Appl Genet. 2010 Nov;121(8):1527-39.

2倍体、4倍体、6倍体の小麦で T 細胞刺激性エピトープを調べた結果、4倍体、6倍体で高値を示した。AA および BB/SS ゲノムに α-グリアジン ペプチドの存在が少ないか存在しなかった。


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注意すべきは、現在のパン小麦もスペルト小麦もAABBDDで6倍体です。

 
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3)     2010年Theor Appl Genet2010 Nov;121(8):1527-39.

セリアック病の発症に関与するエピトープは、現在のパン小麦で高かった。古代小麦の2倍体、4倍体の使用が低毒性と示唆される。

 

4)2010年:Mol Biosyst2010 Nov;6(11):2206-13.

4倍体小麦(デュラム小麦)は、主にパスタの調理に使われる。品種改良の結果、何千もの4倍体小麦品種が存在するが、4倍体のランドレースもまだ維持されており、地元の食用に使用されている。小麦に含まれるグルテンタンパク質は、遺伝的素因を持つ人が摂取すると、T細胞を介した自己免疫疾患であるセリアック病を誘発する可能性がある。四倍体小麦は六倍体小麦と比較して、Dゲノムを持たないため、セリアック病の原因となるT細胞刺激性エピトープが減少している可能性がある。

 

5)J Proteomics. 2011 Aug 12;74(8):1279-89.

2011年:古代小麦なかでも2倍体よりも6倍体でIgE結合タンパクが多かった。

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つまり、グルテンによって引き起こされる病気であるセリアック病は、古代小麦の2倍体の小麦やデ4倍体のデュラム小麦では寛容される可能性があるとされる研究があったのは事実です。

しかし、それとは真逆に、デュラム小麦を勧められないという研究もあります。

 

①2009年:Nutrients. 2009 Feb; 1(2): 276–290.

古代小麦(デュラム小麦)のα―グリアジンが他の小麦と同様に有害であるため、セリアック病で控えねばならない。

②2012年:ScientificWorldJournal.2012;2012:837416.

古代のデュラム小麦(Graziella RaKamu)は、 現代小麦と比較して セリアック病への毒性が高いため、セリアック病での摂取を勧められない。

(この論文の抄録で「強く勧める」と誤って記載されていることに注意)

 

そして、2013年に、英国キングス・カレッジ・ロンドンから以下の論文が報告された。

Clin Nutr2013 Dec;32(6):1043-9.

 

背景と目的セリアック病は、遺伝的に素因のある個人の食事性グルテンによって引き起こされる慢性的な小腸の免疫介在性腸障害です。すべてのコムギ品種がセリアック病患者に対して等しく有毒であるかどうかは不明であるため、異なる起源 (古代/現代) および倍数性 (二、四六倍体) を示す 7 つの Triticum 系統を研究しました。

材料と方法コムギの選択された系統は、古代の Triticum monococcum precoce (AA ゲノム) および Triticum speltoides (BB ゲノム)2 つの古代 (Graziella Ra および Kamut) および 2 つの現代 (Senatore Cappelli およびSvevo) コムギおよび Triticum aestivum compactum durum (AABBDD ゲノム)13 人のセリアック病患者から生成された小腸グルテン特異的 T 細胞株は、増殖アッセイによってコムギ系統でテストされました。

結果倍数性または古代/現代の起源に関係なく、コムギのすべての株が、広範囲の刺激指数をカバーする不均一な応答を引き起こしました。

結論小麦の古代株は、セリアック病毒性が低い、またはないことが以前に示唆されていましたが、潜在的な毒性を評価するために、グルテン特異的クローンではなく、複数のセリアック病患者からのグルテン特異的 T 細胞株を使用して免疫原性をテストする必要があります。私たちの調査結果は、小麦の古代系統の回避を含む、セリアック病患者における厳格なグルテンフリーの食事の必要性についてのさらなる証拠を提供します.

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しかし、いずれにせよ、古代小麦とされるスペルト小麦については、そもそも6倍体なので、
すべての研究で推奨はされていないのです。


「スペルト小麦のグルテンは大丈夫」という人は、
「スペルト小麦→古代小麦」と話をすりかえてたのでしょうか?
それとも、昔の論文を古代小麦すべてと勘違いしたのでしょうか?

先に記されているように、
重要なのはFODMAP成分のフルクタンであり、

グルテンではありません。

流行の「グルテンフリー」は「小麦フリー」を意味しており、
ほとんど多くの人はグルテンがないために症状が改善するのではなく、
フルクタンがないために症状が改善するのです。

ということは、せっかく「小麦フリー」にしても、
FODMAPを添加した「グルテンフリー」食品では症状が改善しない可能性があります。

 

そして、スペルト小麦は通常のパン小麦よりもフルクタンが少ないので、

日本低フォドマップ食推進会では、低フォドマップ食に認定しています。

 

 http://blog.livedoor.jp/yoshiharu333/archives/56540672.html

 


 

以上が、「スペルト小麦はグルテンフリーではない」という理由です。

そして、

スペルト小麦は古代と現在の小麦の中で最もグルテンが多いのです。

 

しかし、グルテンが多いことと、小麦アレルギーが関係するのでしょうか?

確かに、アレルギーは糖質ではなくタンパク質に対する反応です。

小麦の場合、タンパク質の多くがグルテンだとしても、グルテン以外のタンパク質(アルブミン、グロブリン)もあります。ですから、グルテンがなくとも、つまりグルテンフリーであっても、他のタンパク質でアレルギーを引き起こす可能性もあります。

つまり、グルテンフリーは小麦アレルギーを予防するとはいえません。

確かに、2018年のある論文では、「スペルト小麦が食物アレルギーをもつ一部の人で耐えることが出来る」という記載があるが、そのエビデンスは不明でです。しかし、スペルト小麦を食した人々がその有用性を実感するためか、世界中で人気が高まっているのは事実のようです。

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0733521016303459