日本低フォドマップ食推進会

会長 宇野良治、医師、医学博士

 



「胃ガンと乳酸菌」について、

新しい論文が米国の有名施設からリリースされる予定であることが分かったので、

再掲載を含め、特集として連載します。


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 もはや常識:乳酸菌で胃癌になる
(初回リリース:2022/5/11)



乳酸菌と胃がんの関係について、もはや、世界中の研究者が認知している。

つまり、胃癌の発症には乳酸菌が関与することがコンセンサスになってきた。


特集1


ピロリ菌は胃癌の発生母地の萎縮性胃炎・腸上皮化生の原因となるが、それだけでは胃癌を発症しにくい。

最近になって、萎縮性胃炎の患者の胃で乳酸桿菌が増加し、さらに胃癌では乳酸桿菌がコロニー形成(定着)していることが明らかとなったが(韓国論文)、20223月、中国の研究者らは、ピロリ菌(+)胃癌とピロリ菌(-)胃癌の胃液の細菌叢と糞便の細菌叢を比較した結果を報告した。彼らは、ピロリ菌の(+)(-)に関わらず、胃癌の人の糞便で乳酸菌である乳酸桿菌とストレプトコッカス(連鎖球菌)が有意に多いことを報告した。それら乳酸菌によって多くの乳酸が産生され、血液での乳酸血症が胃癌の発症や増殖に寄与することが示唆された。つまり、直接的に胃で乳酸菌が増加するばまりではなく、腸で乳酸菌が増加することも胃癌と関与するということである。

Ding, Jianing et al. “Differences in community structure of gastrointestinal tract between Helicobacter pylori positive patients and negative patients with gastric cancer.” Journal of Cancer vol. 13,6 1905-1913. 28 Mar. 2022, doi:10.7150/jca.69873


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8990434/#!po=11.6667


その論文の文章を箇条書きにする。

l  2017年、シンガポールトマレーシアの胃がん患者の細菌遺伝子分析で、乳酸を産生する乳酸菌であるラクトコッカスが増加していた。

l  乳酸の過剰産生は胃癌の成長と胃癌血流のための血管新生を促す

l  連鎖球菌乳酸桿菌の増加は、ピロリ菌陽性胃癌とピロリ菌陰性の胃癌の両方の糞便で発見された。

l  連鎖球菌乳酸桿菌は乳酸菌(LAB)とも呼ばれ、癌に関連する危険な兆候と見なされています。

l  LABは、生体内で活性酸素の発生を促進し、DNAを損傷させ、消化器系細胞の突然変異を誘発することを示す証拠が蓄積されているため、癌に関連する危険信号と見なされている。

l  さらに、LABは上皮間葉転換(EMT)に寄与し、細胞極性の喪失を誘導し、還元反応により血管新生物質を産生する。

l  LABによって産生される乳酸の蓄積は、低酸素誘導因子-1HIF-1)を活性化して胃がんをサポートするなど、がん細胞の燃料や化学経路の一部になっている。

乳酸菌いがん

さらに気になる結果は、ピロリ菌陽性胃癌でアシネトバクターの相対量が多かったことである。この菌の胃での役割はピロリ菌と同様で、胃炎、高ガストリン血症、炎症性サイトカインやガストリンの過剰生産を引き起こし、胃がん、さらには大腸がんを引き起こすことがわかっている。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27604361/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26992426/



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胃癌はピロリ菌の支配が終わった時点で、
乳酸菌やアシネトバクターが増加して胃癌となる可能性があります。


コメントで、

「日本人の胃癌は他の国と違うだろう」
という意見がありました。
では、日本でピロリ菌を除菌した後で増える菌は何でしょうか?

下の資料をご覧ください。


横浜市立大学 須江聡一郎先生の科研費文書から引用

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20K08336/

Helicobacter pylori (H. pylori)
除菌後の内視鏡的かつ組織学的胃炎症例の胃液サンプルを用いた胃細菌叢のメタ16S解析を実施した。全例でH. pylori除菌治療後の便H. pylori抗原の陰性を確認した。本研究は倫理委員会承認、文書での同意取得後に適切に行われた。胃液は上部消化管内視鏡検査時に内視鏡を用いて採取した。胃液細菌叢を構成する門での上位5はFirmicutes, Proteobacteria, Actinobacteria, Bacteroidetes, Fusobacteriaの順に多かった。
属レベルでの上位
15
Streptocuccus(連鎖球菌)
Acinetobacter
Lactobacillus(乳酸桿菌)

VeillonellaPrevotellaRothiaActinobacillusActinomycesKlebsiellaFusobacteriumHaemophilusAtopobiumStenotrophomonasGranulicatellaLeptotrichiaの順に多かった。
Helicobacter属の細菌は検出されず、H. pylori除菌後で除菌成功していることが、メタ16S解析から確認された。
2位のAcinetobacterは胃炎の原因である可能性が、3位のLactobacillusは炎症発がんとの関連7位のActinobacillus10位のFusobacteriumは炎症との関連が、10位のFusobacterium13位のStenotrophomonasは胃発がんでの免疫寛容への関与が既報に基づき考察された。
ISXH. pyloriによるNFκBシグナルにより活性化するため、以上の細菌叢でISX発現が惹起している可能性は高い。以上の胃細菌叢は胃細菌叢除菌のターゲット候補と考えられた。