会長 宇野良治、医師、医学博士
腸の細菌転座は、
腸粘膜を介して通常は無菌の組織およぶ内臓に腸内細菌が侵入することを意味する。
では、どこまで侵入したら転座というのか?
細菌が宿主に侵入して転座するまでの過程は以下である。
A. 細菌が粘膜上皮を超えるて侵入する
B. 腸間膜リンパ節に細菌が侵入する
C. 血液に細菌が混入して他臓器に移行する
細菌の種類によっては、
パイエル板などのM細胞から細菌が通過する生理的な侵入もある。
そのため、「転座」はBとCを意味する。
Aの場合であっても、免疫能が極度に低下した状態、
つまり、易感染性宿主(compromised host)では、
共生細菌であっても、細菌が死滅せずにリンパ管や静脈に流れてゆく。
(たとえば、乳酸桿菌パラカゼイは、粘膜が正常であれば、
M細胞から粘膜下層に入り込んでも無毒であるが、
炎症が激しい粘膜では、炎症を悪化させ、転座を引き起こす。)
Appl Environ Microbiol. 2006 Sep;72(9):5799-805.
このように、すべての乳酸桿菌が腸の炎症に有益であるわけではなく、
乳酸菌クリスパタスは大腸炎の炎症を悪化させる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22654425/

極端な炎症がなくとも、
免疫低下の状態では病的転座を引き起こし、病原体のような病態を呈する可能性がある。
たとえば、リーキーガットのように腸粘膜の透過性が亢進した状態では、
膵臓に転座することがあるが、は粘膜透過性が改善すると転座が減少する。
Diabetes Metab Syndr Obes. 2022 Apr 11;15:1123-1139.
転座は、
細菌の量と病原性の攻撃因子が宿主サイドの免疫力という防御を上回る場合に生じる。
何らかの条件で病原性細菌に変貌して転座を引き起こすことがある。
たとえば、弱毒性の緑膿菌は宿主が亜鉛を過剰に摂取していると病原性細菌に変貌する。
同時に、高濃度の亜鉛は腸粘膜の透過性を亢進する。このような弱毒性細菌(日和見菌)は、
抗生物質に耐性を持ち、治療に難渋する。
要するに、転座の意味は、
弱毒性細菌のように共生細菌であっても、
転座する等状況では、病原菌と認識すべきである。
このように「共生菌であっても病原菌になるる」という現象は、
宿主側の免疫状況でも適応される。

腸透過性が亢進した状態では転座しやすいが、腸粘膜亢進するのは、
肥満、糖尿病、急性膵炎、広範な火傷、慢性的アルコール摂取、全身性エリテマトーデス、
多発性硬化症、セリアック病、炎症性腸疾患、腹部手術直後などである。
腹水を伴う肝硬変マウスでは、乳酸菌の摂取によって90%が盲腸でコロニーを形成し、
24%が転座を来した。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11943421/