宇野良治、医師、医学博士
逆流性食道炎は、ピロリ菌感染が少なくなった日本で急増している。
事実、私の内視鏡検査では、
つまり、無症状を対象とした検査で、
10人中9人が逆流性食道炎の診断名がついてしまう。
その7割は、食道胃の境界の白いひきつれのあるGERD Mであるが、
5mm以下の赤身を有するGERD Aは2割で、
それ以上に進んだ例はは1割以下であるが、時々、BやCに遭遇する。

胃がピロリ菌に感染していれば、
ピロリ菌がアルカリを産生するので胃のpHは5~6程度である。
ピロリ菌がないと、胃のpHは夜間に2以下になるため、
論理的に逆流性食道炎になりやすい。
しかし、
それだけではない。
胃カメラ(内視鏡)の画像が鮮明になったことも理由である。
細いガラスの線維は同じ光を伝導する。
そのガラスファイバーを束ねると、先端に映った画像が映す、
ファイバーを通じて1m以上の先でも画像を映すことが出来る。
そのような原理で胃カメラが出来たため、
未だに、胃カメラを「ファイバー・スコープ」と呼ぶ人もいる。
そのファイバースコープの頃は、
今の電子スコープのようによく見えなかった。
たとえて言えば、曇ったフェイスシールドをした感じである。
そのため、よほどひどい逆流性食道炎でなければ、
逆流性食道炎とは診断できなかった。
例えば、下は食道胃接合部の写真である。

1980年代のファイバースコープによる「正常」のほとんどは、
現在ではGERD Mになってしまうかもしれない。
例えば、この例はファイバースコープでは正常となるかもしれないが、
現在では、逆流性食道炎と診断される。
GERD M,SSBE+

しかし、
昔のファイバースコープでは、この程度にしか見えなかったであろう。

ヘルニアがなく、手前に接合部が見えにくい場合は、
「正常」となりやすい。

つまり、逆流性食道炎の診断は、
きちんと見ているのか?というバイアスもある。
一見正常に見えていても、深呼吸(吸気)で胸腔内圧を上げると、
パッと接合部が開いて、、
鮮明に食道炎が見えることが少なくない。
つまり、そのような操作でも炎症が見えないものを正常とすると、
健診でも1割しか正常はない。
以上から、
内視鏡の画像の向上や検査方法などのバイアスを考えないと、
本当に増えているのかはわからない。