宇野良治、医師・医学博士

 

 


あなたは、脂肪で死亡するかもしれません。

 

冗談抜きで、

いや、本当に増えています。

 

私の仕事の一つに、腹部超音波検査の画像のチェックがありますが、

40歳以上では半数以上の人が脂肪肝のように感じています。

 

日本での10年前までのデータでは3割ほどだったようです。

https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/fatty_liver_diagnosis.pdf)。

1984年:10%以下

1995年:25%以上

2010年:28

 

 

日本では、最近、飲酒が原因ではない非アルコール性脂肪肝が増加していると、各地の医療施設から報告されていますが、それを実感しています。

お酒を飲んでいない脂肪肝が多いのです。

20年前くらいは、太っている人だけに脂肪肝があった感じですが、

最近では、太っていない人にも脂肪肝が多くみられます。

 

脂肪肝とは、肝障害の有無が前提ではなく、肝臓の細胞に一定の中性脂肪(トリグリセライド)が沈着している状態の総称です。脂肪肝の診断基準は、そもそも、本来の定義は肝臓に太い針を刺して(肝生検)組織を採取して顕微鏡でみて脂肪が多いことで診断されますが、その方法では手間がかかるだけでなく、合併症も少なくなく、さらに一部の組織だけの評価なので、たまたま脂肪がない場所を採取すれば誤診となります。肝生検で入院すると医療費10万以上かかるので、日本人の全ての脂肪肝を肝生検すれば財政面から、医療崩壊してしまいます。そこで、体表から観察する腹部超音波検査による診断がメインっとなっています。採血での肝機能の異常、特に、γ―GTP ALP’GPT)の上昇がある場合だけではなく、超音波検査だけで見つかる脂肪肝もあります。(脂肪肝の定義が脂肪沈着なので、肝機能障害のない脂肪肝があってもいいわけです)

 

では、脂肪肝のなにが問題なのでしょうか?

 

ニューイングランド・ジャーナルの最も新しい論文(20211021日配信)では、非アルコール性脂肪肝は静脈瘤出血、肝臓癌、2型糖尿病が増加し、脂肪肝がない人よりもハザード比が6.8なので、

およそ7死亡しやすいと報告されました。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2029349?query=gastroenterology

 

米国では、肝硬変の原因としてC型肝炎よりも非アルコール性脂肪肝が多くなっており、今後、日本も同様になるでしょう。

つまり、人間ドックや検診の世界では、脂肪肝をどう評価して、どう指導するかが、動脈硬化以上に最重要課題となってゆくでしょう。

 

死亡しやすいといっても、非アルコール性脂肪肝では、進行の度合いによってステージがあります。このステージは、肝硬変を最悪としているため、肝硬変の原因となる肝臓の線維化の程度によって、5つに分類されています。簡単医説明すると、肝臓に脂肪がつくと、肝臓が炎症を起こします。そして、肝臓の細胞が壊れるため、肝細胞が壊れて上昇する肝酵素(ALTなど)が血液中で上昇しますが、肝臓での持続的炎症でだんだんと繊維化を生じて肝臓が固くなっていきます。そして、肝臓の細胞が少なくなって硬くなったが肝硬変です。

その程度は肝生検の分類で、

F0は線維症なし、

F1:門脈線維症、

F2:門脈周囲線維症、

F3:架橋線維症、

F4:肝硬変
を示します。

 

F1からF3は慢性肝炎の状態です。

そして、肝硬変に近くなるほど死亡しやすいことがわかっています。

 

では、肝生検しなければ、死亡の危険度は評価できないのでしょうか?

一般的に、肝硬変に近づくと血小板数が減少します。血小板数が10万以下であれば、F4の可能性が高くなります。また、肝臓が固くなれば、肝臓に血液が回らなくなり、血液が脾臓のほうに迂回するので脾臓が大きくなります。

 

しかし、肝硬変になる前に、F1~F3を評価して、危険性を明らかにして、さらに、食事療法などで改善しているかを正しく評価することが求められています。

 

そのため、生検ではない安全な方法でのグレード分類が試みられています。

 

たとえば、8つの特殊な血液先勝検査を組み合わせて、血液検査で線維化を評価する方法が報告されています。

 
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https://www.journal-of-hepatology.eu/article/S0168-8278(16)30167-2/fulltext#secst005

 

 

しかし、コスト面から検診レベルでの普及は困難です。

 

一方、超音波検査での脂肪肝の分類があります。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC6259408/

定期健康診断中の無症候性患者における超音波での脂肪肝の報告の臨床的関連性

J Int MedRes201811; 4611):4447–4454

この論文では、グレードが0から3に分類され、

グレード0:正常

グレード1:軽度:横隔膜と肝内血管境界の正常な視覚化を伴う肝実質の微細エコーのわずかなびまん性の増加

グレード2:中程度:肝内血管と横隔膜の視覚化がわずかに損なわれた、細かいエコーの適度なびまん性の増加

グレード3:肝臓内の血管の境界、横隔膜、および肝臓の右葉の後部の視覚化が不十分またはまったくない、微細なエコーの著しい増加
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 (ab)肝腎コントラスト陽性

  cd)肝腎コントラストの著しい増加し、肝内血管境界、横隔膜、および右葉の後部が視覚化されていないグレード3のびまん性脂肪浸潤

 

なお、日本超音波医学会では、2019年に以下のように記しています。

https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/fatty_liver_diagnosis.pdf

脂肪肝の超音波診断基準()

肝腎()コントラスト(高輝度肝)の有無を基軸に肝内門脈枝・肝静脈枝の不明瞭化、深部減衰(横隔膜の認識)の所見が加わるか否かにより半定量的に脂肪肝の程度を評価する。

軽度(肝腎コントラストのみ)、

中等度(肝腎コントラスト+肝内門脈枝・肝静脈枝の不明瞭化もしくは深部減衰のどちらかの所見)、

高度(肝腎コントラスト+肝内門脈枝・肝静脈枝の不明瞭化+深部減衰)

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しかし、超音波検査での脂肪肝の感度、特異度自体が必ずしも高くないことが指摘されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19846234/


本来、脂肪肝の定義は肝臓の5%の脂肪とされていますが、肝生検で確定診断がついている人を対象とした研究では、脂肪が20%以上の場合の超音波検査での脂肪肝の診断の感度100%、特異度90%でしたが、全体的な感度は60%でした。つまり、ある程度、脂肪がないと通常の超音波検査では脂肪肝を診断できないということです。

 


さて、これまでの話で、矛盾を感じませんか?

l  脂肪肝は死亡しやすい

l  脂肪肝での死亡は肝臓の線維化と相関する

l  肝臓の線維化の簡便な評価が必要である

以上については間違いはありません。

しかし、超音波検査でのグレードは、脂肪の量を評価するグレードであり、線維化を評価しているとは言えないです。つまり、脂肪が多くても、線維化がなければ、死亡に直結しないので、あまり意味はない可能性があります。

だから、最初に書いた「脂肪で死亡」は、間違いなのです。

「線維化で死亡」なのです。

 

肝臓の線維化を評価するには、通常の超音波検査ではなく、エラストグラフィー(ファイブロスキャン)が有用であるとされています。

https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/elast_kan_ja.pdf


そして、2017年から日本では保険点数化されており、

肝臓用の線維化測定に適した機器も販売されています。

https://www.innervision.co.jp/sp/products/release/20180130

 

通常の超音波検査の脂肪肝グレードとフィブロスキャンによる肝線維症の程度の間に相関がないことが報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14570735/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC6909544/

 

つまり、通常の超音波検査では、脂肪肝については、
その有無だけを確認すればよく、脂肪肝のグレードが上がっても、
「肝臓の脂肪が増えているので肝硬変になります」とは、言えないのです。
言い換えれば、グレード分類に何の意味があるのか?
改めて考える必要があります。

ということで、

検診や人間ドックで、血液検査で肝機能障害がなくとも、超音波検査で脂肪肝と診断された場合は、特に血小板数が低い場合や脾臓が大きい場合は、エラストグラフィーのある病院で、一度、肝臓の線維化を評価してもらうことが必要なのかもしれません。

全国で、この検査ができる病院は、以下で検索できます、

https://kanzo-kensa.com/clinic/

 



おだいじに・・・・