宇野良治、医師・医学博士

 

 
注) この記事は、あくまでも、私見です。

私のeメールには、最近では20ほどのメールが来るので、毎日チェックしなければ大変なことになります。

先月、「Bスポット療法」を紹介するメールが来ました。

送信者はBスポット療法で症状が改善したらしく、

私に知ってほしいということでした。

 

その後、TVでも、

コロナ後遺症にBスポット療法がおこなわれていることが報道されました。


 BBB

実は、

私は、この件について無視しようと思っていました。

 

というのは、私は内視鏡とともに生きてきましたが、経鼻内視鏡に関しては2002年ころから、経鼻胃内視鏡検査のみならず、気管支鏡を応用したりしながら、イレウスチューブを挿入したり、経鼻的に胃瘻を行ったり、気管内挿管も経鼻内視鏡で行い、21世紀になってからの経鼻内視鏡を行った例数は、約1万人を超えるでしょう。そして、経鼻内視鏡検査では、物理的に、このBスポットという部位は強く何度も擦られますが、それで免疫力がアップするとは理解できなかったからです。経鼻内視鏡検査では、両鼻腔が均等に広がっている人はほとんどなく、片方の鼻腔だけが広く、つまり、日本人の多くの人(高齢になると両方が開く)片方の鼻腔だけで鼻呼吸をしている可能性があり、であれば、おそらく、Bスポット治療は呼吸をしている方で行われるであろう。しかし、広がった鼻腔から挿入する経鼻内視鏡検査では、内視鏡を抜去する時、その部位が特に慢性炎症で出血しやすいという経験がなかったからです。さらに、私の場合は、異臭に悩んでいましたが、そもそも、嗅神経は鼻腔に分布しており、鼻腔を過ぎた上咽頭に存在しないし、血管が豊富なのはその部位ではないので、何らかの偶然で有効だったのかもしれないと思ったのです。

 

しかし、自分でもあれこれ実験してみた結果、自分なりの私見が得られたので記します。

 

 

このBスポット療法について、2020の日本の文献から概要を抜き出すと以下です。

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/63/3/63_119/_pdf/-char/ja

 

塩化亜鉛液による嗅覚障害が考えられた 1

田中 大貴、ほか

耳展 6331191222020

 

 

l  1960年代,塩化亜鉛液を浸した綿棒等で上咽頭を擦過し,組織の収縮・抗炎症作用により上咽頭炎を治療する上咽頭擦過治療(Epipharyngeal Abrasive TherapyEAT)が報告され,後にB スポット療法として知られるようになった。

l  EATは,1% 塩化亜鉛液を浸した綿棒等を経口腔または経鼻的に上咽頭に擦過塗布するという手技で消炎を図ることができると言われている。

l  EATは,組織の収斂・抗炎症作用を利用した上咽頭炎など初期の感冒症状に対して一部の施設にて行 われている。

l  副作用としては疼痛や鼻汁,鼻出血,倦怠感,稀に嗅覚障害を来すことがある。臭覚障害が EATの手技によるものなのか,塩化亜鉛の塗布が原因なのかは不明である。

l  国外では同様の亜鉛化合物であるグルコン酸亜鉛が初期の感冒に効果があるとされ, 錠剤や点鼻薬,塗布薬が一般人向けに市販されているが,そのグルコン酸亜鉛による嗅覚障害の報告が散見される。

l  経鼻ルートの場合,挿入方向を間違えれば容易に嗅裂や上鼻甲介といった 嗅粘膜に塩化亜鉛液を塗布することになり,嗅裂炎による気導性嗅覚障害や嗅粘膜障害による嗅神経性 嗅覚障害を引き起こしうる。

 

つまり、抗炎症作用と謳っているが、粘膜では炎症を生じえる液体を使用しているということです。解剖学的にBスポットと言う場所に豊富なリンパ装置など特別な組織学的な特異性なく、その場所を刺激することによる免疫活性が生じるとは考えに難いと思います。その部位に炎症を生じる可能性はありますが、その部位での一過性の炎症が治癒するときに特殊な免疫効果をきたすのでしょうか?なぜ、その場所でなければならないのか?論理的な正当性のある理論を見出せません。

 

私に来たメールでは、保険適用についても書かれていましたが、耳鼻科のなかにはその都度、医療費6000円の内視鏡を行っている所もあるらしいので、技術をもって安全におこなえば、それなりに請求できるということになります。

 

http://jibikkuma.jp/eat.html

https://shirobon.net/qabbs_detail.php?bbs_id=24305

 

また、塩化亜鉛液ではなく、ルゴオール液を使用する場合もあるようです。

http://home.e-catv.ne.jp/jibika/bspot.html

 

・・・・

話は、脱線しますが、私の父は田舎の開業医でしたが、私が子供の頃、風邪で喉が痛いときは、必ずルゴールを塗られました。そのたびに、「おえー」となっていましたが、だんだん、おえーとするのが癖になり、おえーとしたいだけのために「のどが痛い」と言っていた時もありました。そのため、小さいころから上室性頻拍で青ざめると、自分で指をのどに入れて迷走神経反射を起こして治していました。Bスポット治療が迷走神経を刺激して免疫力をアップするという説もネットでありますが、私の経験では、喉に指を入れるほうが迷走神経が刺激されるので、「迷走神経刺激説」は説得力を感じません。

・・・・・・・・・・・・

小さいころから、風邪ではルゴールを塗っていたので、このコロナがはやった頃から、薬局でルゴールを買い占め、綿棒をネットで沢山購入し、ほとんど毎日のように右咽頭から上咽頭に塗っています。そして、気が付いたのは、123回行うと、右耳管の入り口まで炎症を起こすようで、右耳の内部がかゆくなります。

そして、異臭を感じるようになってからも、続けていましたが、効果はありませんでした。

 

ところがです・・・・

 

Bスポットの話から、口からではなく、経鼻的に行ってみました。

これまで、口から行っていた方法と同じように、たっぷりルコール液をしみこませた綿棒を右の鼻腔から挿入しました。(左の鼻腔には入りませんでした。)

 

大変なことが起きました。

 

Bスポットまで行く途中、鼻腔にルゴールが塗布され、とてつもない痛みとくしゃみを生じました。それでも、我慢して、喉に突き当たるまで挿入しました。

Bスポットには知覚神経に乏しいのか、押されている感じはありましたが、痛みはありませんでした。

その後、鼻腔の痛みは数時間続きました。

そして、気が付くと、痛かった右の鼻腔に炎症を生じたためか、狭窄していること、そして、対照的に、何年も閉塞していた左鼻腔が急に開いたのです。これまで、私の鼻腔は右のみが広く、小指がすっぽり奥まで入るほどで、左鼻腔は全く呼吸に使用されていませんでしたが、それが右鼻腔が狭窄じた後、小指が入るほど左鼻腔が開いたのです。

その事実から考えました。

もしかしたら、右鼻腔のみで呼吸をしていたので、アレルゲンや病原体もすべて、右鼻腔で受け止めていたので、右のリンパリンパ節がはれ上がり、さらに、右側の歯の歯槽膿漏も悪化したのではないか?臭覚異常も、右の鼻腔に負担がかかっているためではなかろうか?

であれば、この方法で右鼻腔に炎症を引き起こし、右鼻腔を閉塞させ、左鼻腔で呼吸をすれば、すべてが改善するのではないか?

 

その後、繰り返し、同じ方法を行ったところ、右鼻腔の狭窄と同時に、異臭は消失し、驚いたことに右頸部のリンパ節も縮小し、さらに歯槽膿漏も幾分よくなり、さらに、ずっと37度に近かった熱も36.5度台に下がりました。実は、右頸部のリンパ節腫脹はリンパ腫だと思っていて、つまり、悪性リンパ腫じゃないか?と、ずっと思っていましたが、そのリンパ節腫大が、完全に消失したのです。

 

つまり、これまでの経鼻内視鏡の経験を含めた私の私見は以下です。

 


Bスポットを刺激することで慢性上咽頭炎の病態を改善するというよりは、

その部位まで到達する前に鼻腔に溶液が塗布されて炎症を引き起こすことにより鼻腔狭窄が生じる。それによって、片側だけで行っていた呼吸による空気の物理的負荷の減少、鼻腔を通過するアレルゲンや病原体を受け止める負荷が、両側の鼻腔に振り分けられ、片側の負担が減る。そのために、片側の負荷による慢性炎症があった場合、その負荷が減ることにより鼻腔、喉頭、咽頭の炎症が減少する。

 

確かに、1960年代には確認できなかった慢性上咽頭炎が内視鏡的に診断できるようになったというのは説得力があります。

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology/31/1/31_69/_pdf/-char/ja

 

https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/

 

しかし、そのような炎症は、空気の通過する側の咽頭にあるのではないでしょうか?

 

そして、慢性炎症を「くすぶり炎症」のようにとらえて、くすぶっている炎症を擦過によって燃やして消していまうという理論は確かに説得力があり、合理的な仮説です。私自身、そのような仮説は大好きであり、そうであってもいいでしょう。

 

私の経験では、口腔からのアプローチでも、かなり厳しく塗布すれば軽度の狭窄は生じえます。しかし、口腔からアプローチは鼻腔からのアプローチよりも明らかに有効性が乏しいと感じています。

 

これについて、検討するために、私の場合、これまで使用していた右鼻をビニールテープで止めて、Bスポット療法と同等の効果があるのか、確認しています。

 

以上の私見について、ご意見のある耳鼻科の先生が沢山おられるでしょう。

 

しかし、以下について検討すれば、次のステージに行くことができるでしょう。

 

l  慢性上気道炎の左右差と鼻腔の広さの関係

l  Bスポット療法による鼻腔閉塞の経過と対側鼻腔の開大

l  狭窄鼻腔の開大と臭覚異常軽快の関係

l  組織生検をGSとした内視鏡診断の慢性炎症の感度・特異度

l  組織学的慢性上気道炎の診断基準

l  慢性上気道炎の症状軽快と組織学的変化の関係

 

 
例えば、消化管内視鏡検査委では、pHの低い液体や組織障害のある液の散布で、

粘膜は白濁し、脱落しますが、その現象は「膿がでている」のではありません。

最も典型的なのは、胃瘻部の肉芽に対する硝酸銀液の治療です。

繰り返して、粘膜脱落を行えば、消化管では、粘膜下層に線維化を生じて、

ひきつれを生じ、硬くなったり、血流が悪化したりします。

私見としては、医療では内視鏡で毎回確認して事項すべきだと思います。




<追記>

大気汚染により、呼吸器官の組織でACE2が増加することが確認されています。、

PM2.5 でも証明されています。ACE2だけではなく、TMPRESS2も増加することも確認されています。

PM2やTMPRESS2は、コロナウイルスの感染性を高めます。

つまり、片方の同じ鼻腔から常に呼吸している場合は、

片側の鼻腔や咽頭でPM2やTMPRESS2の増加しているのは自明の理です。

そのため、鼻呼吸する鼻腔を変更させることは感染を予防する可能性があるかもしれません。



https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33422505/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/labs/pmc/articles/PMC7432777/

https://particleandfibretoxicology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12989-021-00404-3

https://ejb.springeropen.com/articles/10.1186/s43168-021-00089-4

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.05.15.097501v1.full.pdf

https://airqualitynews.com/2020/12/01/study-to-investigate-link-between-covid-19-and-air-pollution/