宇野良治

 
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ピロリ菌の除菌によって胃粘膜の炎症が消失し、急激に胃粘膜が胃酸を産生するようになると、著しい胃内pH低下と胃液の増加をきたすため、逆流性食道炎を生じることがる。実際に、ピロリ菌除菌後の人に逆流性食道炎が多く発生することが報告されていた。

2021年4月、三重大学からピロリ菌除菌成功後に逆流性食道炎が増加するが、除菌失敗の場合では逆流性食道炎が生じないことが報告された。

 

Increased Reflux Esophagitis after Helicobacter pylori Eradication Therapy in Cases Undergoing Endoscopic Submucosal Dissection for Early Gastric Cancer

Masaki Katsurahara, et al. Cancers 202113(8), 1779; https://doi.org/10.3390/cancers13081779

 

<サマリー>
ヘリコバクターピロリ(以下ピロリ菌)感染症は胃癌の発症に関連しています。逆流性食道炎は、胃癌の外科的治療を受けている患者の術後期間に発生する可能性があります。逆流性食道炎におけるピロリ菌除菌の役割は物議を醸しています。ここでは、早期胃癌の内視鏡的粘膜下切除術を受けた患者におけるピロリ菌除菌の前後の逆流性食道炎の発生を評価しました。除菌療法前後の逆流性食道炎は、フォローアップ中に評価されました。逆流性食道炎の発生率は、除菌に成功したグループでは3.1%から18.8%に増加しましたが、根絶に失敗したグループでは逆流性食道炎の症例は観察されませんでした。ピロリ菌除菌の成功率と逆流性食道炎の発症の間には有意な相関関係がありました。この研究は、ヘリコバクターピロリ根絶療法の成功が、早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術を有する患者において新たに発症した逆流性食道炎の危険因子であることを示しています。
<抄録>
背景:逆流性食道炎の病因におけるピロリ菌の役割については議論の余地があります。この研究では、早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術を受けた患者を対象に、ピロリ菌除菌前後の逆流性食道炎の頻度を調査しました。

方法:この研究には、研究の基準を満たす160人の患者が含まれていました。内視鏡検査はピロリ菌除菌の前後に行われ、逆流性食道炎は追跡期間中に評価されました。結果:早期胃癌患者におけるピロリ菌の血清陽性率は68.8%であり、そのうち101人が除菌療法を受けました。フォローアップ期間中、逆流性食道炎の発生率は、除菌に成功したグループでは3.1%から18.8%に増加しましたが、根絶に失敗したグループでは逆流性食道炎の症例は観察されませんでした。単変量解析と多変量解析では、ピロリ除菌率の成功と逆流性食道炎の発症との間に有意な相関関係があることが示されました。

結論:この研究は、ピロリ菌除菌療法の成功が、早期胃癌の内視鏡的粘膜下層剥離術患者において新たに発症した逆流性食道炎の危険因子であることを示しました。

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この研究で、ピロリ菌除菌による逆流性食道炎発生のオッズ比は5.577ということでした。

除菌して逆流性食道炎が何倍増えるか?についてはオッズ比ではなくリスク比ですが、私が計算したところリスク比は5なので除菌によって逆流性食道炎が5倍増えたということです。

この研究で重要なところは、対象者の平均年齢6970であったことです。ピロリ菌による早期胃癌は高齢者に多く、そのようなケースでは胃粘膜が広範囲な萎縮性胃炎を生じているため、除菌しても萎縮性胃炎がほとんど改善しないことが多いのです。そのような荒廃した胃粘膜であっても、除菌によって胃酸が増加して逆流性食道炎が増加するということなのでしょうか?
対象者のなかで年齢が平均である70歳以下のオッズ比が2.781なので、やはり、胃癌を発症した集団のなかであっても、比較的若く、胃粘膜の萎縮の範囲が広範ではない症例に逆流性食道炎を生じやすい可能性があり(たとえば、萎縮のレベルがC-3以下で逆流性食道炎を生じやすいとか)I、そこまでのデータ分析と考察があればベターだと思います。