宇野良治

 



 

小心症候群・・・・

 

気持ちが小さく、オドオドしている人のことではありません。

 

Small Heart Syndrome(小心症候群)とは、胸部X線写真で肺に比して心臓が異常に小さく、心臓から全身に送られる血液量が少ないために起立性低血圧症を伴う人に使われる用語です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/advpub/0/advpub_2673-19/_pdf/-char/ja



日本では、心胸比(心臓の横幅÷肺の横幅)が35%未満を「滴状心(てきじょうしん)」と呼ばれますが、これは主に肺気腫で肺の面積が大きくなって心臓が小さく見えることを意味していましたが、慢性呼吸不全から心不全を生じる場合もあります。

小心症候群の場合の心胸比は42%以下なので、35%未満でなくとも心拍出量が低下して症状を生じることがあるということになります。

 

小心症候群は、単に「小さな心胸比」(Small Cardio-thoracic Ratio)とも呼ばれますが、以下の疾患と関連している可能性があります。

副腎機能不全(アジソン病など)

心臓移植後

高齢

栄養障害

拒食症and/or 過食症

収縮性心膜炎

肺気腫

慢性疲労症候群

https://radiopaedia.org/articles/differential-diagnosis-for-a-small-cardiothoracic-ratio

 

私が、この症候群で最も懸念しているのは、食事を減らすダイエットや貧困で食事が出来ず、異常に体重減少を生じた場合の心不全による死亡です。

というのは、私自身、何度もダイエットを行い、10キロ以上減量したことが10回ほど経験していますが、ある時期、血圧が低下し、起立性低血圧を生じ、さらに胸部のレントゲン写真で驚くほど心臓が小さくなっていたことを確認したことがあるからです。その頃は、断食だけでなく、大量の菓子パンを買って、嚙んで口の中で流体にしてから口から出す「チューニング」まで行っていました。その頃の血圧は上が90代でしたが、しゃがんだ後に立つとめまいがありました。つまり、急激なダイエットは心機能を低下させるということを自分自身経験していました。

そして、このコロナ禍で、多くの若い人が、この症候群に罹患する危険性を感じています。コロナのために仕事がなく、きちんと食べることができない人がTVで放送されたことがあります。しかし、きちんと食べないと、仕事があっても、働くことが出来なくなる事例が多いのです。

 

日本の慢性疲労症候群における小心症候群の研究では、42人の患者の62%で心胸比が42%以下で、心エコー検査で左室不全による心拍出量の低下を認めています。

https://www.journal-of-cardiology.com/article/S0914-5087(09)00066-5/fulltext

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/topics/201005/515061.html

 

左心不全の症状は、動機、易疲労感、低血圧、意識障害などなので、症状的にも合致しています。

この日本の研究でのレントゲン写真は以下です。

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出典:Miwa K, et al. Cardiac function fluctuates during exacerbation and remission in young adults with chronic fatigue syndrome and "small heart". Journal of Cardiology 2009; 54: 29-35.

 

その論文では、「24歳女性。15カ月前から重度の全身倦怠感と易疲労感があり、頻繁に重度の呼吸困難を生じていた。さらに、集中力も低下し、病院の看護師として働くことが困難になった。」と記されていました。

また、この論文で、患者たちが発症する引き金になったのは、下痢、精神的ストレスによる食欲不振、忙しい生活、望まない体重増加、不規則な労働時間、夏の発汗などでした。そして、慢性疲労の症状の改善と心機能改善、頻拍の減少、心胸比の増加と相関していました。

以上から、「無理なダイエットによる心臓機能低下によって、働くことが困難になるほどの疲労を生じる」という仮説に矛盾はないようです。

 

長期間におよぶ拒食症の場合でも、著しく小さな心臓では入院が必要になり、加療によって心胸比の増大を認めた報告があります。この患者も40歳の日本人女性、身長164㎝で体重28.3㎏、BMI10.5。血圧72/45mmHg、心胸比は24%でした。入院時の心胸比は43%まで回復しました。しかし、退院後、再度、悪化があり、治療の困難さが示唆されています。

Takata T, et al. Severe small heart syndrtome in a patient with anorexia nervosa. American J Medicine 2020. https://www.amjmed.com/article/S0002-9343(20)31090-1/fulltext

 

他の日本の慢性疲労症候群の症例でも就職困難になるようです。

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出典:Miwa K. Small heart as a constitutive factor predisposing to chronic fatigure syndrome. 
https://pdfs.semanticscholar.org/6e79/8e4245cecf4205d9eeeac3a5ca0de2284f00.pdf?_ga=2.7462194.1651126523.1618104774-794192064.1617085378

38歳の男性患者の胸部レントゲン写真(心胸郭比:28%)脊柱側弯症も認められました。 約15年前から、重度の全身倦怠感、容易な疲労感、努力性呼吸困難、動悸と胸痛に苦しんでいました。 彼はまた、時折、過呼吸、震え、発汗と睡眠障害もありました。 彼は就職したものの、仕事ができないことに気づきました。10年前に精神科医に相談したところ、不安神経症と診断され投薬治療を受けました。しかし、彼はアルコール依存症に陥りました。その後、呼吸困難と不安のため、救急外来を頻繁に受診しました。」


さらに同じ文献の症例です。

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出典:Miwa K. Small heart as a constitutive factor predisposing to chronic fatigure syndrome. 
https://pdfs.semanticscholar.org/6e79/8e4245cecf4205d9eeeac3a5ca0de2284f00.pdf?_ga=2.7462194.1651126523.1618104774-794192064.1617085378

「小心症候群の24歳の女性患者の胸部レントゲン写真(心胸郭比:32%)。 約7年間、重度の全身倦怠感に苦しんでいました。さらに、失神および起立性めまいがあり、頻繁に頭痛、胸痛、および喉の痛みもありました。 彼女は、だんだんと短期記憶と集中力が低下したため、栄養士として働くことができないことがよくありました。」

このような、重症の慢性疲労症候群のBMIの平均は18でした。

https://pdfs.semanticscholar.org/6e79/8e4245cecf4205d9eeeac3a5ca0de2284f00.pdf?_ga=2.7462194.1651126523.1618104774-794192064.1617085378

 


人間ドックや健診などでは、ほとんど肥満が問題視されますが、実は痩せすぎの方が、死亡しやすいことがわかっています。

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つまり、コロナ禍では、肥満だけにフォーカスを合わせずに、心臓の小さい異常な痩せにも注視する必要があります。