宇野

 





以前にも書いたことがあるが、最近、瀑状胃Cascade stomachCS)の人が多い。

胃の入り口の穹窿部が背部で拡張しているので、ここで内視鏡がたわんでしまい、経鼻用の細径内視鏡では十二指腸に挿入できないこともある。

下の図の上は、従来、正常とされてきた胃の形(内視鏡時)
下の図は、内視鏡挿入時の
瀑状胃


図1

瀑(ばく)とは、Cascadeと同様に崖の滝の流れの意味であり、

おそらく、バリウム検査で、穹窿部から流れ落ちるバリウムの様から、命名されたのであろう。

ばくじょうい



瀑状胃
の内視鏡検査については、ネットで、軽部友明医師が以下のように記している。

 

https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3804

 

瀑状胃の内視鏡挿入を難しくする要因は、

12段に折れ曲がった特徴的な胃の形状により、通常の視野とは違う方向に管腔が開けるために、胃に入った時点で道に迷ってしまう。

2)スコープを進めようとしてもfornix(穹窿部)方向にスコープがたわんでしまい、スコープが進まなくなってしまう、の2つが考えられます。
通常の症例では、胃にスコープが入ると内視鏡画面6時方向に分水嶺があり、右上方向に管腔が開けます。しかし、瀑状胃の場合、分水嶺が12時方向となり、右方向はfornixとなります。瀑状胃と知らずに通常通りスコープを進めると,fornixでとぐろを巻いてしまい、いわゆるfornix地獄に陥ってしまいます。
1)の対策としては、瀑状胃であるとわかった時点で、ある程度送気をして管腔方向を見きわめることが重要です。しかし、ここで問題となるのが(2)です。fornixに空気が溜まってスペースができてしまうと、管腔方向がわかっていてもfornix方向にスコープがたわんでしまい,スコープを奥に進めることができなくなります。
2)の対策は、スコープのたわむスペースをなくすためにfornixに溜まった空気を脱気してから、見きわめておいた管腔方向にスコープを進めることです。最後にスコープを進める方向が重要になります。スコープを押し進めるときに分水嶺の手前にスコープがたわみはじめると、fornixにスコープが落ち込んでしまい、深部挿入が不可能になります。そうならないためのコツは、小弯沿いを狙ってスコープを進めることです。アップアングルをかけて12時方向の分水嶺を越え、右捻りを加えながら小弯沿いを進みます。そのとき、アップアングルをかけて右に捻るために小弯後壁にスコープ先端がぶつかる形になり、視野がとれなくなります。そこで左アングルをかけて管腔をとらえるようにしてスコープを進めていきます。そうすることで、分水嶺を越えたところでスコープのヒップが胃体部にぶつかり、先進力を得ることができます。
もし途中でスコープがたわんでしまい、前に進まなくなった場合は、食道胃接合部まで戻って丁寧に脱気してやり直すのがよいでしょう。

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要は、空気を入れずに幽門まで挿入すればいい。

上記で分水嶺というのは、胃が折れ曲がってできた尾根であり、

Fundal incisura angularis(胃底の胃角)といわれる。

https://www.sor.org/system/files/article/201810/the_cascade_stomach_-_revisited_in_the_21st_century_-_what_has_changed.pdf

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群馬大学の研究では瀑状胃の程度をグレード分類した。

Kusano M, et al. New endoscopic classification of cascade stomach, a risk factor for reflux esophagitis. Journal of Gastroenterology  2017; 52, 211–217.

グレード0:内視鏡を挿入した時に尾根が見えない

グレード1:内視鏡を挿入した時に尾根が見える

グレード2:内視鏡をJターンしても尾根が観察される

グレード3:胃を完全に膨らませた状態でも尾根が観察される

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そして、瀑状胃
のグレードが高いほど逆流性食道炎を来しやすいと報告された。
将来的に、シビアな逆流性食道炎、食道腺癌が増加する要因でもある。

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しかし、この結果には若干の問題があるかもしれない。

というのは、重度の瀑状胃の場合、食道と胃の境界の締め付けが緩い「食道裂肛ヘルニア」になっていることが多く、内視鏡で送気をしても穹窿部だけが膨らんで、弛んだ食道胃接合部から口側へどんどん空気が出ていって、胃体部が広がらないことがしばしばである。

最大の問題は、瀑状胃では、胃体中部の大弯が膨らまないため、観察不十分となることである。

私の場合、その問題の解決として、顔を左側臥位としたまま、

首から下を仰臥位にして、胃の全体を膨らませるようにしている。

 

そもそも、20年以上前ではピロリ菌による胃癌が胃の下半分に多く、

その部分が十分に伸展する左側臥位は内視鏡観察では合理的な姿勢であった。

しかし、ピロリ菌陰性者が多くなり、

胃体部より口側(上)の胃癌の発見が重要となってきた。

つまり、左側臥位は高齢者では適した体位であるが、

今後、中年より若年の胃に適した、内視鏡検査の新たな体位を検討する必要があろう。

なお、私の経験では、逆流性食道炎の症状は、
左側臥位で誘発されやすいことを記しておく。