宇野
日本では2013年から、
慢性胃炎に対してピロリ菌除菌療法が保険適用に拡大された。
その最大の理由はピロリ菌除菌によって胃癌の発症が抑制されると思われていたためであった。
しかし、その根拠となった研究は、日本でのわずか3年間、片群300人以下での観察研究であった。
その研究の対象者は一度胃癌を発症し、内視鏡的に治療された人々で、その後の経過観察で再び発症する胃癌(異時性胃癌)の発生率が調べられた。
そして、3年で胃癌発生を3分の1に抑制できると報告された。
しかし、
その後、
これまで、
多くの同様の結果が報告されたが、確かに5年以内までは除菌した群で胃癌の発症が低い研究結果が多いが、
しかし、5年以降は除菌した群で胃癌の発症が増加し、
結果として、
胃癌抑制効果はないという研究結果も複数報告(大阪大学、九州大学など)された。
この理由について、
除菌によって胃粘膜が変化して、
内視鏡で発見しにくい胃癌になるという私の「潜伏癌」説は、
世界的コンセンサスを得た。
つまり、これまでの常識では診断できない胃癌の診断が重要となる。
つまり、除菌後は、
従来の内視鏡診断では胃癌発見が手遅れになる。
2020年8月31日、これまで世界中から報告された異時性胃癌の46の研究の28366人のデータを分析した結果が報告された。
今回の報告は最も新しいピロリ菌除菌と胃癌抑制のメタアナリシスである。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7458740/
Michele Oliveira De Marco MO. et al. Prognostic
factors for ESD of early gastric cancers: a systematic review and
meta-analysis. Endosc Int Open. 2020 Sep; 8(9): E1144–E1155. Published online
2020 Aug 31. doi: 10.1055/a-1201-3089
その結果、
除菌した群としなかった群で、胃癌発生に差はなかった。(p=0.11)
さらに、
初めからピロリ菌除陰性群とピロリ菌除菌群との間にも胃癌の発生に差はなかった。(p=0.85)
つまり、ピロリ菌除菌による胃癌抑制効果はないと結論された。
そして、胃癌の発症に関与していたのは、萎縮性胃炎の程度であった。(p=0.006)

