Yoshiharu Uno

 

最近の症例報告では新型肺炎COVID-19 の患者の糞便中に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNAが検出されている。それは、気道でのウイルスが陰性になっても糞便で陽性になっていることがあるため、ウイルスを含んだ喀痰なの嚥下による一過性の消化管通過では説明することができなかった。しかし、これまで内視鏡検査や剖検で消化管で肉眼的炎症が確認されていなかったため、消化管のどこにウイルスが潜んでいるのか?消化管の細胞にウイルスが感染するのか?謎であった。

202033日、米国消化器病学会の機関ジャーナルであるGastroenterologyのオンラインで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による非肉眼的胃腸感染の証拠が報告された。

Xiao F, Tang M, Zheng X, Liu Y, Li X, Shan H, Evidence for gastrointestinal infection of SARS-CoV-2 [published online March 3, 2020]. Gastroenterology. doi:10.1053/j.gastro.2020.02.055

 
この研究では73人の患者のうち、39人が糞便でウイルスが検出された。

つまり半数以上が排便により、ウイルスを排泄している。

この研究では糞便中にウイルスが検出されたケースでは食道、胃、十二指腸、および直腸の粘膜上皮は、HE染色による有意なダメージはなかったが、胃、十二指腸、直腸の粘膜固有層に多数の浸潤性プラズマ細胞とリンパ球、および間質性浮腫が見られた。

SARS-CoV-2が体内の細胞に感染するためには、細胞表面にウイルス宿主受容体であるACE2を必要とするが、ACE2は主に胃腸上皮で陽性に染色され、胃腸の上皮でこのウイルスが感染するために好条件であることが証明された。さらに、ウイルスのヌクレオカプシドタンパク質(NP)の染色でも、胃、十二指腸、および直腸の腺上皮細胞の細胞質で視覚化された。

ういるす

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(20)30282-1/pdf


つまり、咽頭から採取された(あるいは喀痰)検体によるPCR検査で陰性であっても、胃腸にウイルスが定着している場合は、胃腸の感染した細胞から感染性ビリオン(注)を産生し、糞便を介して感染を広めてゆくことが明らかとなった。もっとも、厄介なことは、下痢症状は、気道と糞便にウイルスが検出される人の44%、気道で陰性で糞便陽性の33%と少なく、自覚症状がなく胃腸に感染している人が複数存在するということである。
飛沫とか、エアロゾルとかだけではなく、
ノロウイルスのような対策が必須である。
つまり、ノロのように、複数の人が使用するトイレのドアノブなどが感染源になる。

ノロウイルスは、血液型O型の人に感染しやすいが、
新型コロナでは、血液型O型の人に感染しにくい。
これは、興味深い。

注:ビリオン (virion) は、細胞外におけるウイルスの状態であり、完全な粒子構造を持ち、感染性を有するウイルス粒子のことをいう。