Uno Y

 

ひとり、ひとりの症例を真剣に考え、何か良い方法はないのか?という純粋な気持ちは、新たな治療を生み出してゆく。

 

今回、九州支部長から、糖尿病性下痢についての質問があったので、詳細に調べた。一昔前は、慢性下痢を含む糖尿病性胃腸障害は、糖尿病性末梢神経障害、糖尿病性自律神経障害などが原因であり、「どうしようもありませんね。とにかく、血糖値をコントロールして、これ以上、悪くならないようにしましょう」と私自身も言っていたのであるが、最近の研究報告では、血糖の吸収を抑制する糖尿病治療薬や食品の影響やそれらによるSIBOの関与、さらにはセリアック病の関与が明らかとなってきた。

 

これはまさに低フォドマップの領域であり、糖尿病性下痢は低フォドマップ食で軽快する可能性が浮上してきたのである。

 

<参考文献>

 

2018

米国の661人の糖尿病の調査研究

糖尿病では、慢性下痢(11%)よりも慢性便秘(15%)が多いが、非糖尿病群と比して、慢性下痢は有意に多い(非糖尿病の慢性下痢6%)。糖尿病性下痢の高頻度は経口血糖降下薬に起因している。

Sommers T, Mitsuhashi S, Singh P, et al. Prevalence of Chronic Constipation and Chronic Diarrhea in Diabetic Individuals in the United States. Am J Gastroenterol. 2018 Nov 8. doi: 10.1038/s41395-018-0418-8.

 

 

2017

糖尿病の消化管機能障害の糖尿病性下痢は小腸内菌増殖症SIBOに関係している可能性があり、リファキシミンが有効である。

Gotfried J, Priest S, Schey R. Diabetes and the Small Intestine.

Curr Treat Options Gastroenterol. 2017 Dec;15(4):490-507.

 

2016

下痢と糖尿病との関連は、70年以上にわたって知られている。糖尿病患者の下痢の有病率は約20%であり、臨床症状は多様である。糖尿病の下痢は、セリアック病または微視的大腸炎などと関連する可能性がある。膵臓機能が低下による膵機能外分泌不全によって糖尿病患者の下痢を引き起こす可能性がある。糖尿病に続発する自律神経障害や末梢神経障害などの症状の存在は、肛門直腸の機能不全や大便失禁などの障害と関係する。糖尿病性下痢は細菌過増殖による影響を受ける。

Frías Ordoñez JS, Otero Regino W. [Chronic diarrhea in the diabetic. A review of the literature]. Rev Gastroenterol Peru. 2016 Oct-Dec;36(4):340-349.

 


2016

中国の症例:糖尿病の50歳男性。長期間継続する慢性下痢により体重減少あり。内視鏡生検で好酸球性腸炎と診断され、ステロイド治療で軽快した。

Wang ST, Zhong DR, Sun XH. [The 453rd case: diarrhea, weight loss and diabetes mellitus]. Zhonghua Nei Ke Za Zhi. 2016 Dec 1;55(12):979-982.

 


2016

フィンランドの歯科研究所からの報告:虫歯予防や糖尿病患者が摂取するポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラ口トールなど)はポリオール関連浸透圧性下痢を引き起こす

Mäkinen KK. Gastrointestinal Disturbances Associated with the Consumption of Sugar Alcohols with Special Consideration of Xylitol: Scientific Review and Instructions for Dentists and Other Health-Care Professionals. Int J Dent. 2016;2016:5967907.

 


2016

日本の国立循環器センターの調査:大腸内視鏡検査を受けた4738人(うち糖尿病603人)

大腸内視鏡で異常がない場合でも、慢性便秘、慢性下痢、便失禁の頻度は糖尿病で多かった。

Ihana-Sugiyama N, Nagata N, Yamamoto-Honda R, et al. Constipation, hard stools, fecal urgency, and incomplete evacuation, but not diarrhea is associated with diabetes and its related factors. World J Gastroenterol. 2016 Mar 21;22(11):3252-60.

 

2014

古典的研究のまとめ:糖尿病性胃腸障害は、糖尿病性神経障害、糖尿病性自律神経障害、腸内神経障害、腸平滑筋異常などの原因が研究されてきた。

Yarandi SS, Srinivasan S. Diabetic gastrointestinal motility disorders and the role of enteric nervous system: current status and future directions. Neurogastroenterol Motil. 2014 May;26(5):611-24.

 

 

2013

小腸の急速な通過を伴う糖尿病性下痢にはラモセトロンが有用であった。

Lee TH, Lee JS. Ramosetron might be useful for treating diabetic diarrhea with a rapid small bowel transit time. Korean J Intern Med. 2013 Jan;28(1):106-7.

 

2013

下痢を有する糖尿病患者は、診断および治療において臨床上の課題を提示することがある。特定の診断は、一般集団よりも糖尿病患者においてより一般的である。薬物はしばしば慢性的な下痢の原因となり、副作用として下痢を患っている患者のために投薬リストを常に慎重に調べるべきである。メトホルミンは、糖尿病患者の下痢の一般的な原因である。糖尿病患者は、下痢を伴う関連疾患(例えば、セリアックスプルーおよび顕微鏡的大腸炎)を有する可能性がより高いソルビトールや他の薬剤を含む可能性のある無糖食品を摂取すると、糖尿病患者に下痢を引き起こす可能性がある。最後に、糖尿病性腸疾患自体が下痢を引き起こす可能性がある。様々な病因は、徹底的な履歴と適切な診断テストで診断することができる。

Gould M, Sellin JH. Diabetic diarrhea. Curr Gastroenterol Rep. 2009 Oct;11(5):354-9.

 

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<結語>

糖尿病性胃腸障害は、糖尿病治療薬が主たる原因かもしれない。

糖尿病患者は、「血糖値を下げる」健康食品で慢性下痢を生じる可能性が高い。

糖尿病性胃腸障害では浸透圧性下痢を予防する低フォドマップ食を試みるべきである。

<注意>
糖尿病治療薬は、一部の医療関係者のなかで、「やせ薬」として、痩身目的に服用している事実がある。確かに痩身効果はあるかもしれないが、「血糖値を下げる」健康食品と同様に、過敏性腸症候群、SIBOを惹起する危険性がある。