日本低FODMAP食推進会: 会長: Uno Y

 

 

これまでの知識を整理しましょう。

なぜ、小麦が過敏性腸症候群(IBS)の原因(引き金:トリガー)となるのか?

に関して、FODMAP理論では、オリゴ糖のフルクタン(イヌリン)が、小腸で水分を増加させ、大腸内で発酵し、ガスが増加する。水分量とガス量は、消化管通過時間を変動させる物理的ファクターであるため、下痢や便秘を生じる。

2016年まではそれだけでよかった。

しかし、2016年、IBSの診断基準が変わった。

下痢と便秘、腹部不快、腹部膨満だけでIBSであったが、2016年からは腹痛があることが必須条件になった。

水分量とガス量の変動だけで腹痛を来すか?

しかし、同じ水分量、ガス量でも腹痛のある人とない人がいる。

それは何故か?

そこで、痛みの閾値、つまり腸管の過敏の程度が登場してくる。

痛みの閾値の感受性は精神的要因に左右されると言えば、たしかに関係もするであろうが、それが全てとすれば、あまりにも稚拙であり、そこで科学的思考が停止してしまう。そこで、精神的ファクターを排除すると、肥満細胞の関与が重要になる。

肥満細胞の増加によってヒスタミンなどの痛み刺激物質が産生される。

そして、肥満細胞が増加する因子として、大腸の血流障害があることをつきとめた。血流障害は過剰な運動による急性虚血だけではなく、慢性炎症による血流障害も原因となる。さらに、肥満細胞が増加するもうひとつの重要な要因はアレルギーである。

 

小麦の場合、高FODMAPのイヌリンの他に、

小麦アレルギー、セリアック病、非セリアックグルテン過敏症の3つの問題がある。

まず、セリアック病は小麦の蛋白質であるグルテンによって、小腸の慢性炎症を引き起こす。この病気は、遺伝子に異常があり、HLA IIDQ2 / DQ8対立遺伝子を保有する人がグルテンを摂取すると組織トランスグルタミナーゼに対するT細胞媒介免疫反応を引き起こし、粘膜損傷および最終的には腸の絨毛萎縮をもたらし、栄養障害を来す。しかし、それに至らない状況では、IBS症状だけの場合もある。以前は、セリアック病は遺伝子的に白人しか罹患しないと考えられていたが、最近ではアジア民族にもあり、日本では0.7%生じるとされている。治療は、グルテンを含まない「グルテンフリー」を一生にわたり摂取することにある。この場合においても、慢性炎症で粘膜の血流障害があれば、高FODMAPによる水分量とガス量の増加によって腹痛を誘発することは自明の理である。つまり、セリアック病であっても、IBS症状に対しては、グルテンフリーよりも、グルテンフリーを包括する低FODMAP食が有効であることは論理的に明らかである。

 セリアック病ではないが、セリアック病の軽度の症状を来し、グルテンフリー食が有効なものが非セリアック・グルテン過敏症 (NCGS)である。しかし、そもそも、そんなものはないという説もあるが、抗グリアジンIgGの陽性が多い。遺伝子異常や皮膚症状はない。NCGSの場合も、グルテンフリーよりも低FODMAP食が有効であるエビデンスが得られており、NCGSのなかには小麦だけではない原因が存在する可能性がある。

 小麦アレルギーは、小麦を主食としなかった日本人には縁遠いものであったが、西洋ではローマ時代から、「パン屋の喘息」として知られており、パン屋、粉ミルクやペストリー工場労働者の1015%に生じている。小麦アレルギーは小児ではアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、血管浮腫、時に全身アナフィラキシー症状を来すことがあるが、成人では認識が困難なこともあり、最も多いのはIBS症状(下痢、鼓腸)である。小麦によって、IgE媒介の免疫反応を引き起こして症状を引き起こすが、IgE-mediated food hypersensitivity disordersと言われるように、胃腸症状に加えて、肥満細胞および好塩基球からのメディエーターの大量放出によって引き起こされる蕁麻疹、血管性浮腫、アトピー性皮膚炎、口腔症候群、喘息、鼻炎、結膜炎を来たす。

 つまり、まとめると、小麦の摂取は、グルテンや小麦アレルギーによって、そもそも便通障害のベースを生じ、それに小麦のイヌリンによって物理的因子が加わって、症状が悪化するということになる。

 日本低FODMAP食推進会では、小麦粉よりもイヌリンの少ないスペルト小麦の使用を推奨している。

 

 そして、2017年、小麦に含まれるニッケルによって、ニッケルアレルギーもIBS症状に関与している可能性が示唆されている。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28157173

 

Contact Dermatitis Due to Nickel Allergy in Patients Suffering from Non-Celiac Wheat Sensitivity.

Nutrients. 2017 Feb 2;9(2). pii: E103. doi: 10.3390/nu9020103.

 

Abstract

BACKGROUND: Non-celiac wheat sensitivity (NCWS) is a new clinical entity in the world of gluten-related diseases. Nickel, the most frequent cause of contact allergy, can be found in wheat and results in systemic nickel allergy syndrome and mimics irritable bowel syndrome (IBS). 

Objective: To evaluate the frequency of contact dermatitis due to nickel allergy in NCWS patients diagnosed by a double-blind placebo-controlled(DBPC) challenge, and to identify  the  characteristics  of  NCWS  patients  with  nickel  allergy.  Methods: We performed  a prospective study of 60 patients (54 females, 6 males; mean age 34.1 ± 8.1 years) diagnosed with NCWS from December 2014 to November 2016; 80 age- and sex-matched subjects with functional gastrointestinal symptoms served as controls. Patients reporting contact dermatitis related to nickel-containing objects underwent nickel patch test.

RESULTS: Six out of sixty patients(10%) with NCWS suffered from contact dermatitis and nickel allergy and this frequency was statistically higher (p = 0.04)than observed in the control group (5%). The main clinical characteristic of NCWS patients with nickel allergy was a higher frequency of cutaneous symptoms after wheat ingestion compared to NCWS patients who did not suffer from nickel allergy (p < 0.0001.

CONCLUSIONS: Contact dermatitis and nickel allergy  are more  frequent  in  NCWS  patients than  in  subjects  with  functional gastrointestinal disorders; furthermore, these patients had a very high frequency of cutaneous manifestations after wheat  ingestion.  Nickel  allergy  should  be  evaluated  in  NCWS  patients  who  have  cutaneous  manifestations after wheat ingestion.

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金属アレルギー外来というサイトでは、ニッケルが多い食品として、はと麦、小麦麦芽、米ぬか、インゲン豆、大豆、きな粉、チョコレート、ハマグリ、生うに、アーモンド、コショウ、クルミ、落花生、干しひじき、昆布、シソ、タケノコ、ワラビ、ナメコ、ヒラタケ、コーヒー、お茶、紅茶、ウーロン茶が掲載されている。

http://www.sugiyama-dental.com/allergy/allergy13/


高ニッケルの食品の多くは、高FODMAP食とオーバーラップしている。

 

 

そして、ニッケルアレルビーであっても、スペルト小麦では症状を来さないという自験例もみられる。

 

http://yukari-akiyama.com/life/allergy/1697

秋山ゆかり公式サイト