原発性硬化性胆管炎にバンコマイシンが有効

Uno Y

2010年でも年間50万の医学論文が公開されている。そのなかには信憑性のない論文もあり、また、利益誘導に利用されるための論文もある。対立する意見がある場合でも、都合の良い論文だけを集めて有効性を示すようなインターネット記事を公開していることもある。ディベートのない偏ったインターネット記事をいくらでもつくることができるのである。よくあるのは、「そのままでは命の危険が!」と危険性を煽り、自分の会社の製品の購入に誘導する「マッチ・ポンプ商法」記事である。また、研究機関でも、否定する研究を全てオミットして、自分たちの研究成果だけを最先端として、紹介している記事も少なくない。それは、日本だけではなく、世界中のネットで行われている。

いったい、何を信用すればいいのか?

そのような状況で、私が最も信頼している医療ネットサイトは、Medscapeである。私が、このサイトを信用するのは、このサイトの責任者たちが、製薬会社と対決した過去があるからである。つまり、スポンサーの影響を受けていない可能性を感じるからである。

本日、Alimentary Pharmacology & Therapeuticsに掲載された論文が、Medscapeで取り上げられた。

Aliment Pharmacol Ther. 2018;47(7):886-895.

 

The Evidence That Vancomycin Is a Therapeutic Option for Primary Sclerosing Cholangitis

原発性硬化性胆管炎(PSC)は、肝硬変および末期肝疾患を引き起こし得る。PSC患者の50%〜75%が炎症性腸疾患(IBD)を共存し、最も一般的には潰瘍性大腸炎を有し、IBD単独よりもIBD+PSCの場合、大腸癌を生じる危険性が10倍高い。そのような大腸の影響の関係から、腸内フローラとPSCとの関わりについて研究が行われてきた。PSC患者では、腸内細菌叢の多様性とdysbiosisが著しく減少している。健常対照群とIBD単独患者と比較して、EnterococcusEscherichiaFusobacteriumLactobacillusVeillonellaBlautia Lachnospiraceae Barnesiellacea およびMegasphaera属の過剰発現が顕著である。

dysbiosis腸内細菌叢を構成する細菌種や細菌数が減少することにより,細菌叢の多様性が低下した状態

糞便とは対照的に、粘膜関連細菌はまた、非培養Clostriadiales IIの過少と、PSCの患者における低い細菌多様性を発見されている。(つまり、便だけの研究はあてにならない)

現在、PSCの治療に承認された治療法はないが、過去に糞便移植やプロバイオティクス、抗生物質を含むテトラサイクリン、ミノサイクリン、リファミキシン、メトロニダゾールなど多くの薬物療法が試みられてきたが、バンコマイシンは有望な薬剤である。

バンコマイシンが宿主の微生物を変化させ、粘膜免疫および炎症シグナルを変化させることを示唆し、全身免疫機能ならびに肝臓に送達される微生物産物を変化させる。最終的に、PSC患者の肝臓における免疫/炎症応答のダウンレギュレーション、肝臓酵素の減少、組織学的および画像異常の改善をもたらし、全体的な臨床転帰の改善につながる可能性がある。また、バンコマイシンによって消化管における免疫調節効果があることがを実証されている。これは、PSCが、腸または異常な腸の微生物のリンパ球の自己免疫障害によって引き起こされる可能性があることを示唆している。PSC患者は、バンコマイシンを止めると、肝臓酵素がベースラインまで戻ってくることが多い。バンコマイシンが有効な治療薬であるかどうかを確認するためにはさらなる研究が必要である。