Y Uno


30年前は、バレット食道は非常に珍しく、

見つければ、大騒ぎをしたものである。

ところが、現在、数人の胃カメラで、1人以上、バレット食道があるという状況になった。

日本でピロリ菌が急速に自然減少し始め、

30歳代、40歳代には、もはや萎縮性胃炎はないと言って過言ではない。 

それとともに、本来、萎縮性胃炎で低酸だった日本人の胃は高酸になり、

それまで珍しかったバレット食道が急増してきた。


萎縮性胃炎の1%に胃癌が発生するとしても、

現在の状況からすると、30歳代、40歳代が高齢になっても胃がんになることは稀になる。

つまり、胃がんは、除菌療法の有無にかかわらす、単に自然減少してゆくことは自明の理である。

自然減少してゆく疾患の予防に税金を投入している国は世界中で日本だけである。

(個人的には、戦艦大和のようなロマンと思う)


話を戻そう。


バレット食道は、逆流性食道炎を繰り返して、

その炎症部分で食道粘膜が胃粘膜に置き換わって生じると思っていたが、

バレット食道のなかには、「明らかな炎症のある逆流性食道炎」がないこともある。

これについては、不思議だと思っていた。

それは、バレット食道ではなく、食道裂孔ヘルニアとしたいが、

ヘルニアに特徴的な接合部の緩みがないことがある。

粘膜面での食道と胃の境界が不整であれば、逆流性食道炎の炎症がなくとも、

瘢痕治癒のグレードMになっていて、炎症を繰り返しているのだろうと理解はできる。

しかし、明らかなヘルニアがなく、そして、

粘膜面の境界が不正でないバレット食道は、どう解釈すべきか?

グレードNとすべきか?

と悩んでいたところ、

興味深いケースを見た。

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eは、扁平上皮の白色調の食道粘膜である。

dは、白く肥厚した境界で、その先が胃粘膜であれば、グレードMの逆流性食道炎である。

しかし、胃粘膜はaであった。

bは、食道側にはみ出した円柱上皮のバレット上皮である。

バレット上皮の下には棚状血管がみられる。

そこまでは、通常であるが、

問題は、cである。薄い白い粘膜で被われていた。

eと比して、明らかに、薄い扁平上皮があった。

これは、境界明瞭で不整を伴わないバレット食道(グレードM)へ移行する過程なのか?

あるいは、バレット食道が改善してゆく過程なのか?

はやり、前者が考えやすい。

あたかも、dで、食道粘膜が肥厚して防波堤をつくりながら、

消えゆく扁平上皮を見送っているように感じた。

つまり、明らかな炎症を伴わず、静かに扁平上皮がバレット上皮に移行することがあり、

その場合には、境界線は防波堤のように肥厚するのではないか?

と、妄想した。