ピロリ菌によって胃粘膜が炎症を起こし、その長期経過で胃粘膜が萎縮して萎縮性胃炎となる。胃粘膜が薄くなるため、粘膜の下の血管像が透けて見える。
これを「血管透見像」という。
胃カメラの後の説明では、下の図を使って説明している。
ところが、である。
いろいろな問題があることに気がつく。
- ピロリ菌陰性のほうが、陽性者よりも胃の穹窿部で血管透見がみられる。
- ピロリ菌陰性であっても、送気量を増やすと胃全体に血管透見がみられる。
これらの問題は、電子内視鏡によって内視鏡の画像がどんどんよくなり、萎縮性胃炎の内視鏡像が研究されたファイバースコープの時代の画像と整合性がついていないためかもしれない。つまり、見えすぎるのである。TVがデジタル放送になって、顔の皺が見えすぎるようなものである。
以前にも書いたが、あたかも「血管透見像」なるものはピロリ菌陰性者でもみられる。特に、穹窿部では、空気量が少ないとRAC(ピロリ菌陰性に特有な所見)がみられるが、空気量を多少増やすと「血管透見像」がみられるのである。


(ピロリ菌未感染の穹窿部:血管透見像がみられる)
そして、この穹窿部の「血管透見像」は、ピロリ菌陽性者には、ほとんど認めない。
(ピロリ菌陽性の穹窿部:血管透見像がみられない)
それは、粘膜の炎症のための炎症性細胞の増加による粘膜混濁によるものであろう。つまり、穹窿部では、ピロリ菌陰性、陽性と「血管透見像」の所見は逆転する。
さらに、問題なのは、ピロリ菌陰性者で、空気量を多くすると、胃体部に「血管透見像」が出現する現象である。
ファイバースコープの時代の研究でも、空気量によって、「血管透見像」が異なることが記されている。
(文献) 山下 克子. 主として胃内圧動態からみた萎縮性胃炎の診断基準に関する臨床的研究 . 日本消化器病学会雑誌 Vol. 68 (1971) No. 8 P 834-848
それによれば、粘膜の萎縮が強ければ、わずかの空気量でも「血管透見像」がみられるが、軽度の萎縮では、わずかの空気量で「血管透見像」がみられず、空気量を増やすと、「血管透見像」が出現すると記されている。つまり、萎縮の判定は空気量に依存する。そして、ファイバースコープよりもはるかに画像が良くなった現在では、粘膜萎縮がなくとも空気量が多ければ、粘膜が引き伸ばされて「血管透見像」がみられるのではないか?と考えている。つまり、現在の内視鏡では、空気量の少ない状態で粘膜の萎縮を判断すべきなのかもしれない。
しかし、胃炎の判定のためには、胃体部の粘膜のしわ(fold:皺壁:すうへき)の所見を観察しなければならないが、その際には、大量に空気を送って胃を広げねばならないことになっている。そうすると、自ずと、胃体部にも「血管透見像」が出現するのである。
であるから、最近、私は、穹窿部の血管透見像があればピロリ菌陰性であろうと考え、そして、空気量が多い時点での胃体部の「血管透見像」を無視することにしている。そして、それらを、Pseudo-atrophyと、心の中で命名している。

なお、
なぜ、穹窿部ばかり、このような現象が起こるかの理由であるが、
胃の上部は、そもそも、他の部位よりも伸びやすいということが、40年以上前に報告されている。
<参考資料>


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