血液1滴がん13種早期発見:単純な疑問


 
血液1滴で13種のがんが早期に発見できるという話題が、昨日から本日にかけて、
TV等で大きな話題になった。
示された13種とは、以下である。

 胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、骨軟部腫瘍、神経膠腫

http://www.yomiuri.co.jp/science/20170724-OYT1T50007.html

 

国立がん研究センター(東京都)などは、血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し、来月から臨床研究を始める。

同センターの研究倫理審査委員会が今月中旬、実施を許可した。早ければ3年以内に国に事業化の申請を行う。

 一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、がんによる死亡を減らせる可能性がある。

検査法では、細胞から血液中に分泌される、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA」を活用する。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種類が異なり、一定期間分解されない。

同センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人の保存血液から、乳房や肺、胃、大腸、食道、肝臓、膵臓など13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定した。血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1期」を含め、すべてのがんで95%以上の確率で診断できた。乳がんは97%だった。

YOMIURI ONLINE
以上、コピペ

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この話は、「胃カメラが苦しい」「マンモは痛い」の話から、「血液1滴の検査が実現するまでがん検診を受けないでいよう」など、
予期せぬ国民の反応が危惧される。もし、そのようなことで、癌発見が遅れることがあれば、誰が責任をとるのであろうか?

しかし、予後の良い早期がん(治療が有効であり、かつ、放置すると短期に進行して死亡するがん)が発見されるのであれば、喜ばしいことである。

だが、単純な疑問がある。

(なお、専門用語としては、マイクロRNAの略語はmiRNAが使用されている。)

<単純な疑問>

miRNAを検査した約4万人の検査対象者は、どのようにして発見された「がん」であろうか?

「有症状で病院受診して発見されたがん」+「無症状で検診によって発見されたがん」

ではないか?

つまり、従来の発見方法で発見された人(黒枠)であろうか?

であれば、miRNAでは、そのような対象者の95%が発見されるということである。
(100%ではない。)

111図1

しかし、発生するがんの全体(赤枠)には、

有症状で病院受診したが発見されなかったがん(A

無症状で検診を受けたが見落とされたがん(B

を含む。
それらは、従来の診断方法で発見しにくいがんの可能性がある。
新しい方法で、これらを発見できるのか?が課題である。
しかし、これまでの研究方法のサンプルは、
それらを含まない集団であるため、

miRNA検査で、そのような「がん」を発見できるのか?については未知ではないか?
過去の英文論文では、miRNAは予後判断、治療効果の判定に有用であるというものがほとんどである。
(資料★★★に示すように、大腸がんでは可能性がある。)

miRNA検査がスクリーニングで従来法よりも有効であることを証明するためには、つまり、現行の「がん検診」の方法よりも有効であることを明言するには、現行法で発見されプールされたサンプルではなく、ABを含むであろう集団を対象として、従来の方法よりも感度、特異度が高いことを証明する必要がある。さらに、より早期に発見しても予後が変わらねば、単に不幸な時間を引き伸ばすだけになるため、リードタイム・バイアスを考慮した判断は必須である。



<参考資料>

 

頭頸部(口腔、鼻腔、副鼻腔、咽頭、および喉頭癌でのバオマーカーとしてのmiRNAの検査のメタ解析:治療効果や再発有無判定などフォローアップに有用

http://www.impactjournals.com/oncotarget/index.php?journal=oncotarget&page=article&op=view&path%5B%5D=19224&path%5B%5D=61553

Oncotarget. 2017 Jul 13. doi: 10.18632/oncotarget.19224. [Epub ahead of print]

Meta-analysis of micrornas expression in head and neck cancer: uncovering association with outcome and mechanisms.

 

膀胱がんでmiRNAの検査のメタ解析:進行または再発の早期検出のためのフォローアップマーカーとして治療のために役立つ

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5514092/

Sci Rep. 2017 Jul 17;7(1):5619. doi: 10.1038/s41598-017-05801-3.

MicroRNAs with prognostic significance in bladder cancer: a systematic review and meta-analysis.

 

胃がんサンプルでのmiRNAの研究

PeerJ. 2017 Jun 6;5:e3385. doi: 10.7717/peerj.3385. eCollection 2017.

Combining multi-dimensional data to identify key genes and pathways in gastric cancer.

 

胃がんのリンパ節転移及び予後のためmiRNAの研究

Oncotarget. 2017 May 10. doi: 10.18632/oncotarget.17789. [Epub ahead of print]

Identification of circulating microRNA signatures as potential noninvasive biomarkers for prediction and prognosis of lymph node metastasis in gastric cancer.

 

★★★結腸腺腫および大腸癌に関連する8つのmiRNAが発見され、これらのmiRNAは結腸癌の非侵襲的スクリーニングバイオマーカーとして潜在的に役立つ可能性がある。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5399348/

BMC Med Genomics. 2017 Apr 20;10(1):23. doi: 10.1186/s12920-017-0260-7.

Serum MicroRNA profile in patients with colon adenomas or cancer.

(ただし、この研究においてもサンプル収集法の課題:
すべての血液サンプルは、手術、化学療法および放射線療法を含む任意の治療手順の前に収集された。と、便潜血検査法との感度特異度の比較がない)

 

膵臓癌とmiRNA予後のバイオマーカーとして

Tumour Biol. 2017 Mar;39(3):1010428317695018. doi: 10.1177/1010428317695018.

Plasma microRNA192 in combination with serum CA19-9 as non-invasive prognostic biomarker in periampullary carcinoma.

 

膵臓癌では、従来の腫瘍マーカー(CEA,Ca19-9)よりもmiRNAは精度が高い。(しかし、この研究でのサンプルは従来手段で診断された膵臓癌)

https://www.karger.com/Article/FullText/447872

Cell Physiol Biochem. 2016;39(5):1716-1722. Epub 2016 Sep 19.

Identification of Circulating MiR-25 as a Potential Biomarker for Pancreatic Cancer Diagnosis.


333図1