経鼻内視鏡(5):プーで食道に入るトランペット法
ある本のなかに、経鼻内視鏡検査で最も苦しいと被験者が自覚するのは、
食道入口部であると書かれていた。
それは、鼻痛の10倍以上。
この事実に、「ドキッ」とする内視鏡医はきっと、少なくないであろう。
内視鏡医なら(私自身も)、誰でも覚えがある。
そして、経鼻内視鏡検査の成功は、食道入口部通過にかかっていると言って過言ではない。
しかし、その現実に気がついていない、あるいは、認めたくない内視鏡医も少なくないであろう。
そして、一般的に内視鏡医は、自分が出来ないことは、「そんなことをする必要がない」と言い出すことが多い。
そして、鎮痛剤、鎮静剤、麻酔の使用は、自分の技術を見直すチャンスを逸してしまう。
なぜ、経鼻内視鏡検査で、食道入口部が苦しいのか?
その原因は、2つあると思われる。
ひとつは、前回記したが、ファイバースコープ時代の身にしみこんだ癖のために(術者だけではなく、指導医の教育も)、操作部を上げすぎてしまい、アップダウンの面が食道入口部の軸と一致していない可能性である。操作部を上げすぎると、鼻腔から食道入口部に傾斜がかかるため、右鼻腔から挿入した場合には、力のベクトルが斜め左下方向になり、食道入口部に水平なベクトルが働かない。
そして、もうひとつの原因であるシャフト自体の柔軟性のため、水平方向にベクトルが働かないと、入口部で跳ねられるのである。
シャフトが硬いスコープでは、左右の梨状陥凹から中央へスコープを押し込めば食道に挿入できたが、シャフトが柔軟であればこの常識は通用しないのである。
これは力学的に、
下咽頭と輪状後部の接触する力>スコープ先端に加わる力
と説明できる。
であれば、下咽頭壁と輪状後部の隙間があれば、挿入が容易になる。
その方法は、下咽頭を良く観察するための川田(東京医科歯科大食道外科、川田研郎先生)らのValsalva法が有用である。
この方法は、2012年、「胃と腸」47巻3号、47巻6号で記された。
47巻3号326頁では、その方法が以下のように記されている。
「大きく息を吸って、今度は息を吐きながらプーと頬をできるだけ膨らませます。唇をしっかり結んで空気を漏らさないように息を吐き続けてください」
川田らは、2014年の「消化器内視鏡」26巻11号では、この方法について、Valsalva法から「トランペット法」に名称を変更し、次のように説明している。
トランペット法は、トランペットを吹くように両頬をできる限り膨らませ、息をこらえる方法である。「大きく息を吸って、プーと頬を膨らませてください」と合図する。口をしっかり結んで出来るだけ長く続けてもらい、かつ苦しまないようにするため、検査医も「プー」と声をかけ続けながら辞める時を測るとよい。(「消化器内視鏡」26巻11号1822頁)
また、過去5年間1500件以上の自験例でトランペット法による問題は生じていないとされている。
理論的には、下咽頭部の圧力を上昇させ、その圧力で輪状後部を拳上させるのであるが、私も、この方法を導入している。そして、拳上した輪状後部の先にある食道入口部に内視鏡を挿入すると、「すっ」と内視鏡先端が入ってゆく。
問題点は、検査前のわずかな説明では、被験者の理解が困難な場合も少なくないことである。また、トランペットというのは、頬を膨らませないで、肺活量だけで吹く演奏者も存在する。
そため、以下のような説明の図を用いることが有用であろう。
追記するが、この方法を何度も、自分で練習している時に気がついたが、
耳管に圧力がかかって、耳がぱーんとなることがある。

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