歯周病と認知症:酪酸が原因?であれば。。。

 
Offie Uno Coln

 

 

歯周病菌が産生する「酪酸」がアルツハイマー病の真犯人

という記事があった。

http://healthpress.jp/2017/06/post-3034.html

 

日本大学歯学部の落合邦康特任教授(口腔細菌学)らの研究チームは、歯周病とアルツハイマー病の関連性をラットによる実験によって確認し、512日に福岡市で開かれた日本歯周病学会で発表した(「毎日新聞」2017527日)

研究チームは、「酪酸」が動物の脳にどのような影響を与えるのかを調べるために、健康なラット3匹の歯肉に酪酸を注射。6時間後に、記憶を司る「海馬」、ホルモンの分泌に関わる「松果体」と「下垂体」、さまざまな高度な活動を司る「大脳」、運動機能を調整する「小脳」が受けた酸化ストレスを分析した。

 その結果、「酪酸」を注射したラットは通常のラットに比べ、鉄分子(ヘム)、過酸化水素、遊離脂肪酸の濃度が全ての部位で平均3583%も上昇していた。

落合特任教授によれば、歯周病患者の歯周ポケットからは健常人の1020倍もの酪酸が検出されることから、歯周病巣の酪酸が長期間にわたって脳内に取り込まれると、アルツハイマー病を引き起こす一因になるので、早めに治療をすべきだと指摘している。
(以上コピペ)

。。。。。。。。。。

 

これは、TVでも取り上げられ、大きな話題になったが、消化器病の医者にとっては、大いなるディベートを生み出す話である。

 

というのは、酪酸は短鎖脂肪酸であり、短鎖脂肪酸は、健康に良いとして、日本中で、腸活や発酵食ブームを引き起こしたからである。

 

そして、低FODMAP食では、発酵を抑制する食事療法なので、その短鎖脂肪酸が少なくなることが、ある意味、懸念されていたのである。

 

短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸のなかで、低FODMAP食で最も低下するのは、酪酸である。そして、低FODMAP食では、短鎖脂肪酸全体量が低下するが、統計学的に有意に低下するのは酪酸だけであるという報告もある。

Neurogastroenterol Motil. 2017 Apr;29(4). doi: 10.1111/nmo.12969. Epub 2016 Oct 16.

Effects of varying dietary content of fermentable short-chain carbohydrates on symptoms, fecal microenvironment, and cytokine profiles in patients with irritable bowel syndrome.

 
111図1


単純化すると、低FODMAP食では、糞便中の酪酸量を半分に低下させる。

 

従来、酪酸は腸の健康のバイオマーカーとして扱われた。


Staudacher HM, Whelan K. Altered gastrointestinal microbiota in irritable bowel syndrome and its modification by diet: probiotics, prebiotics and the low FODMAP diet. Proc Nutr Soc. 2016;75:306318.

 

人における研究では、これまで有用とされていたが、動物実験では酪酸が内蔵過敏症の原因であると考えられている。

Interestingly, animal studies have shown that rectal instillation of n-butyric acid may induce visceral hypersensitivity,[31] whereas studies in humans are conflicting.[32, 33]

 

31Bourdu S, Dapoigny M, Chapuy E, et al. Rectal instillation of butyrate provides a novel clinically relevant model of noninflammatory colonic hypersensitivity in rats. Gastroenterology. 2005;128:19962008.
32
Vanhoutvin SA, Troost FJ, Kilkens TO, et al. The effects of butyrate enemas on visceral perception in healthy volunteers. Neurogastroenterol Motil. 2009;21:952e76.

33Kannampalli P, Shaker R, Sengupta JN. Colonic butyrate- algesic or analgesic?Neurogastroenterol Motil. 2011;23:975979.

 


つまり、動物実験と人間の研究では、異なった結果であるが、

今回の歯周病と酪酸の研究報告は動物実験である。また、歯肉に注射した酪酸量がはっきりしない。

 

しかし、もし、酪酸と認知症の因果関係があるのであれば、低FODMAP食は認知症を予防しえる可能性があるかもしれないが、この件に関して、研究の経過観察が必要と思われ、結論は先送りする。