内容確認せよ!「60歳以上の医師が患者を死亡させる?」

 
Office Uno Column

 

ハーバードの公衆衛生専門の津川博士は医学雑誌BMJで、60歳以上の医師は患者死亡率が高いことを発表した。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5431772/

 

 

まず、津川博士については以下の情報がある。

https://scholar.harvard.edu/yusuketsugawa/home

 

Yusuke Tsugawa, MD, MPH, PhD is a Research Associate at Department of Health Policy and Management, Harvard T.H. Chan School of Public Health. Prior, he was a Health Specialist at the World Bank group, and a research fellow at Department of General Medicine and Primary Care at Beth Israel Deaconess Medical Center/Harvard Medical School. His research focuses on the variation in quality and costs of care across individual physicians and its determinants. He received his MD from Tohoku University School of Medicine in Japan, MPH from Harvard T.H. Chan School of Public Health, and PhD in Health Policy from Harvard University. Dr. Tsugawa's research had been featured by several media outlets, including The New York TimesThe Washington Post, andNational Public Radio

 

津川友介

https://healthpolicyhealthecon.com/author/yusuketsugawa/

 

医療政策学者、医師。日本で内科医をした後、世界銀行コンサルタントを経て、ハーバード公衆衛生大学院で修士号(MPH)、ハーバード大学で医療政策学の博士号(PhD)を取得。専門は医療政策学、医療経済学、統計学(因果推論)。

 

いろいろ記事を読んでみましたが、自分なりの見解をエビデンスから導いているようでポジィティブに興味深い。

 

(しかし、食事に関する記事で、アジア人は米を食べすぎているという記載で、「ジャポニカ米」と「タイ米」を区別して考察すべきだと私は思う。たとえば、日本人での糖尿病と米の関係は、日本の米の品質改良で糖分が変更された影響の可能性がある)

 

そして、今回の論文に関しては、

彼のブログにも記されている。

 

https://healthpolicyhealthecon.com/2017/05/17/physician-age-study/

 

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そして、この研究では「担当患者の少ない60歳以上の医師では、入院患者の30日以内の死亡率が高い」ことがわかった。

 

しかし、しかしである。

 

60歳以上の医師では、患者の死亡率が高い」

 

だけが独り歩きしてしまったのである。

 

日本の週刊誌でも取り上げられ、

 

60歳過ぎの医師は危ない」

 

60過ぎの医者は若い頃、腹腔鏡手術を経験していない」

 

など、論文の内容と関係ない話まで飛び出した。

 

イメージとしては、高齢者ドライバーの事故多発のような印象である。

 

しかし、今回の論文をよく読んでみると、

 

その患者の対象は、米国のメディケアを受けている患者である。

 

メディケアはアメリカ合衆国に合法的に5年以上居住している65歳以上のすべての人が給付の対象となる保険制度である。

 

つまり、対象者には小児や若い人は含まれていない

 

さらに、調査された医師は、専門医性のないホスピタリストである。つまり、一般内科の入院患者を扱う医師である。クリニックの家庭医でもなく、総合病院の専門医でもない。腹腔鏡技術など全く無関係の話である。

 

確かに、データでは60歳以上のホスピタリスト医師での死亡率が異常に高いが、単に高齢医師が勉強不足ということなのか?それら医師がどのような経歴を持っているのか?医師の生死感は?など、深い分析が必要であろう。なぜかといえば、論文に書かれているように、ホスピタリスト医師制度が始まったのが1990年代からだということにある。つまり、60歳以上のホスピタリスト医師はそれ以前に約20年間の何らかの医師として働いており、その経験が影響している可能性がないとはいえない。さらに、有意差があった疾患は、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患、神経疾患であり、癌や腎不全では差がなかった。
そして、60歳以上の医師の方が医療費が高いということは、患者がより重症であった可能性も否定できない。また、日本でも高齢者だけが入院する病院で(いわゆる老人病院)は死亡率が非常に高いが(かつ、高齢医師が多い)、この研究では「65歳以上の一般疾患患者」という対象だけで、その患者の年齢層が不明である。つまり、死亡率が高かった60歳以上の医師は、より高齢な患者を担当していた可能性が否定できない。不勉強による能力不足と断言するには、何らかの試験などの客観的能力評価が必要であろう。