公開質問:ガス型IBS
住所と名前を明記した質問がきましたのでお答えします。
疑問点を赤字にしました。
(なお、ネットだけの知識ではなく、著書の熟読をお勧めします。)
<質問>
低FODMAPが効いたガス型のものです。
IBSと診断されてちっともよくならず、ついに医者を見放し、サプリに目をつけ体を鍛え始めだしたころのことです
そのときSIBOとかのことを知り、同時に低FODMAPは見かけてはいたのですがやりたくなかった(牛乳が好き)のでSIBO方面でアプローチをかけてました(モチリンだして小腸を動かすために昼を抜くとか、オレガノやベルベリンサプリをとったり)。
そんなある日アスリートの食べてるパワーボール(プロテイン、牛乳、アーモンド、etc)をためしにとってみたら、三時間後に猛烈な眠気で眠り、起きた後の猛烈な胃痛と膨満感が夜まで続き、悟りが開けました
牛乳が原因だと確信を得て(過去を振り返れば牛乳としか思えないことがちらほら)、いっそやるならFODMAPやるかときめました
初めて数日で、まず眠気が消えました
その次に、年中悩まされてた肩こりが消え
次に、昼の排便(朝に比べると少ない、ガス抜きのついでのような便)が消え
そのままゆるやかに腹のガスは消えていきました
チャレンジ食してみるともちろん牛乳が原因でした
(打診も右側がポンポコポン)
ここで聞きたいことがいくつかあります
腹のガスが消えるのに段階があるのはなぜなのでしょうか?
私のイメージとしてはとらなきゃすぱっと消えそうな感じがあります
とってないのに発酵してガスが進むのはどういうことなのか不思議です
やはりとってなくても乳糖が腸にしつこく残り、それを発酵させてるのでしょうか?
それとも幻肢痛みたいにして免疫が勘違いしてるのでしょうか?
はたまた大腸まで届いた別の糖でしぶとく生きてるのか
?消化酵素についてです
牛乳はそれでもとりたいのでラクターゼとDPP-4の入った消化酵素(enzymedica社)を取り、乳糖カットのア○ディのミルクを飲んでいます。
症状もなく落ち着いていてほっとしています。(今度は乳糖カットなし牛乳に挑戦したいところ)
先生は消化酵素についてどうお思いでしょうか?
好きなのに不耐症という人の救いであればうれしいところですが
グルテン無理だからカレーを食べられないというのは仕方ないとはいえあまりに寂しいことです
コーヒーについて
コーヒーはFODMAP的にはオーケーなんですかね?
刺激物として禁止されてるところが多いように思えますが先生のリストにははいっていましたので少し気になりました
遅延型アレルギー検査ってどうなんでしょうか?
当時高くて手をつけませんでしたが、あれは有用だったのだろうか……
リーキーガット対策などになるとよいのですが
余談なんですが
ホットミルクを飲むとねむくなるという説がありましたが、深部体温とかもあるのでしょうけど、あれは私のような牛乳飲めば眠くなる症状を持つ乳糖不耐症の人だったからでは、なんて最近考えてます
<返信>
まず、初めに、IBSガス型、ガス型IBSという言葉ですが、IBSの世界基準のRome診断基準では、IBSガス型というものはありません。この言葉は、日本で流行していますが、正式な言葉ではありません。しかし、多くの人が、「自分はガス型IBS」と使っていることは、きっと、ガスで困っているIBSの人が多いためだと思います。しかし、2016年のRome IV基準では、腹痛がなければ、IBSと診断されません。また、下痢か便秘かで、話は異なってきます。相談者の文面からは、下痢型に近いように思いますが、腹痛がなければ、新しい世界基準ではIBSではありません。それはともかく、症状は、ガスと眠気ということになります。そして、それは乳糖ではないか?という話になりそうです。
腹のガスが消えるのに段階があるのはなぜなのでしょうか?
とってないのに発酵してガスが進むのはどういうことなのか不思議です
実際に、御本人の腹部ガス像をみていないので、あくまでも推察と理論での話ですが、乳糖不耐症で、乳糖を摂取しないと、すぐに症状が消失する場合もありますが、多くの場合には、複数の不耐症を併発しているので、乳糖だけではなく、果糖、ポリオール、フルクタン(小麦粉など)すべての発酵性物質を一旦、やめるというのが低FODMAP食の考え方です。そして、米国のピメンテル教授が低FODMAP食を低発酵食と言い換えているように、その意味は、発酵を抑制することにあります。確かに、日本人の場合には、白人に比して乳糖不耐症が多いので、白人の場合よりも乳糖だけの抑制で症状が軽快する人が多いでしょう。しかし、それだけではないということです。乳糖を継続的に飲んでいる場合には、やめると症状が一気に改善する場合もあり、また、しばらく摂取していない場合に再開すると症状が数日継続する場合もあります。また、その症状の悪化や軽快には、他の発酵物質の摂取程度にも影響します。繰り返しますが、低FODMAP食は、乳糖だけを控えることではなく、一旦すべての発酵物質の摂取を控えるというものです。そして、軽快するまで、多くは数週間を要します。その後、ひとつの発酵物質から、徐々に確かめながら、チャレンジするという方法です。
先生は消化酵素についてどうお思いでしょうか?
原則的に、消化酵素が少ない(ない)場合と、消化酵素よりも過剰な発酵物質の摂取によって発酵が生じます。ラクターゼの混入された乳製品で症状を来さないのであれば、それを摂取してもよいでしょう。しかし、消化酵素よりも過剰な摂取によっても症状を生じ、すべての発酵物質に対する全能的な消化酵素というものがないため、消化酵素を補いながら発酵物質を摂取するというものではなく、そもそも発酵物質を抑制するというのが低FODMAP食の考えです。ですから、安全な全能的な消化酵素が開発されれてない状況では、低FODMAP食をすべきだと私は考えています。
コーヒーはFODMAP的にはオーケーなんですかね?
コーヒーは発酵性食品には分類されないので、高FODMAPではありません。従来のIBS食事指導には、コーヒーは刺激物質して摂取を控えるように指導されていましたが(これについては私の著書の55頁に記載されています)、低FODMAP食はあくまでも発酵を抑制する目的なので、対象品目にはありません。そして、従来のIBSの食事指導と、低FODMAP食を比較した研究では、低FODMAP食がより有効であったことが確認されています。私としては、刺激物質(コーヒーも含め)は、下痢型IBSでは抑制した方が良かろうと考えています。
遅延型アレルギー検査ってどうなんでしょうか?
リーキーガットを含め、このことについては、様々な説があります。例えば、細胞の隙間をアレルギー物質が通り抜けるという概念に関してですが、大腸では粘膜細胞と直接的に便が接しているのではなく、それなりに厚い粘液層でバリアされています。その粘液層のさらに内側に便があり、粘液層が十分に機能しているのか?が、そもそもの問題であると私は考えています。
ホットミルクを飲むとねむくなる
ミルクを温めると睡眠誘発性物質が産生されているというような知識は私にはありません。ひとつ、理論的に考えられるのは、発酵性のガスの影響です。たとえば、発酵で腸内に産生された過剰なガスイオンは、血液中に溶け込んで、静脈を経由して肺で排泄されます。しかし、過剰なガスイオンは呼気だけで排泄されず、動脈血にも混入されるとすれば、それは脳動脈を経由して脳へ影響する可能性がありあります。その場合には、眠くなるというよりは怠くなるかもしれません。
<あとがき>
少しの期間でも、食べたいものを食べないで生きることは、腹部症状を来すことよりも辛いのであれば、食事療法は適応できないかもしれません。しかし、そもそも、「食べたいもの」とは、なぜあるのか?と考えた時、小さい頃からの親が与えた食事の学習や記憶、さらに食品産業によるプロパガンダの影響かもしれないと思いました。例えば、私の生まれ育った青森では、醤油文化で、人々は、なんにでも醤油をかけて食べていました。そのため、鮨などは、醤油に漬けて食べるような感じだったので、青森から出た時には、食べ物が全て薄味すぎて、美味しいと感じませんでした。しかし、故郷を離れて数年もすると、醤油を使わなくなりました。本当に人間にとって絶対的に美味しいものを、今の人間が食べているのか?と考えます。たとえば、甘いものがほとんどなかった鎌倉時代の人に今の日本人が食べている「おいしいもの」を食べさせたら、何と言うか?きっと、「まずい」というと私は思うのです。
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