下痢と便秘を繰り返す混合型IBSの原因は主に乳糖か?
Yoshiharu Uno
従来、過敏性腸症候群(IBS)の原因は主としてストレスと考えられてきましたが、21世紀になってからは、食物不耐症に関連してきていることが明らかになってきました。食物不耐症は、食事の中の物質を消化する酵素が少ない(ない)、あるいは、消化酵素を上回る当該物質の摂取によって、小腸で十分に吸収されないために、それ自身の高浸透圧による水分増加と、大腸での発酵によるガス増加にを生じるため、下痢や便秘を生じます。その主たる原因物質として、発酵性の糖質であるFODMAPが特定され、その摂取を制限する低FODMAP食が提唱され、その有効性が確認されています。
しかし、私自身、IBSの病態生理のなかで、解決すべき大きな問題がありました。それは以下です。
IBSには、下痢型、便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型があるが、なぜ、このようになるのか?
下痢と便秘は相反する症状です。
なぜ、同じIBSで相反する結果になるのか?
さらに、なぜ、両者を繰り返すことがありうるのか?ということです。
これまで、IBSがストレスとされていた理由は、きっと、自律神経には交感神経と副交感神経があって、それらは相反する作用があるため、ストレスによって自律神経が乱れて、ある時には交感神経、ある時には副交感神経が優位になって、相反する症状を来すと説明すれば、それは矛盾がないため、信じられてきたのだと思われます。しかし、原因がわからないための苦し紛れのラフな理論のように思われます。というのは、FODMAPと自律神経の乱れと直接的な関係がないのです。低FODMAP食でIBSの70-80%が軽快する理由は自律神経説では説明できないでのす。
では、なぜ、便秘と下痢といった相反する症状が共存するのか?
さらに、混合型IBSをFODMAPで説明できるのか?
という問題です。
私は、その問題を解決するために、FODMAPで増加する水分とガスについて、その流動力学について研究しました。そこで出会ったのがベルヌーイの定理でした。ベルヌーイの定理によって、大腸の管の中に水分が増加すると、腸管内の通過速度が増加することは、数式で表現する事が出来ました。そして、次の問題は、ガスが増加すると便秘になる理由についても、ベルヌーイの定理で説明できることがわかりました。これについての説明は、今月(来月?)のAmerican Journal of Gastroenterologyで、私のレター論文が掲載されるので、それまでは詳しくは記載できません。
では、最後の問題である混合性IBS、つまり、「なぜ、下痢と便秘を交互に来す人がいるのか?」について、自分自身で実験してみました。
2週間ほど、低FODMAPの水分だけで生活した後、牛乳を350ml飲んでみました。簡易的乳糖負荷試験です。飲んだ後、2時間で、下痢を生じました。その後も下痢を繰り返しましたが、4,5時間後に、ガスが増加してきました。その夜は、腹痛を来すほどにガスが増加しました。そして、横になると症状は軽快しましたが、朝、寝ぼけた状況で起き上がってすぐに、ボコボコとガスが動き出しました。その後、便意があるが便もガスも出ないという症状を来しました。
このことから、以下が考察されました。
乳糖による水分増加とガス増加には時間な乖離があり、水分増加による下痢は早期に生じ、発酵によるガス増加は下痢で排泄されずに残った乳糖の発酵によって緩やかに生じ、長時間影響する。

乳糖発酵によるガスは、主に横行結腸に溜まり、位置エネルギーのないガスは、主に浮力によって立位では横行結腸に蓄積する。
つまり、混合型IBSの発症する理由は、浸透圧性下痢と発酵性ガスの時間的乖離が原因であると結論しました。そして、この乖離は、腸管の条件(論文投稿中なので詳細は記さず)によって、下痢が優位になるのか、便秘が優位になるのかが決定されると考えられます。
日本人の場合、乳糖不耐症は80-90%存在し、乳糖は大腸の奥で発酵するので、混合型IBSの原因は主として乳糖なのかもしれません。
また、ガスによる症状は、横になると軽快します。つまり、仕事へ行かず、家で寝ていれば、症状は軽快します。このエビデンスは、IBSがストレスと考えられた理由であるかもしれません。
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