ガッテン:虫垂炎手術で大腸癌発生は本当か?

 

Office Uno Column

 

201738日のNHKのガッテン

 

虫垂炎を手術した患者と手術していない人とを比較し、虫垂炎手術後の患者の1.5年から3.5年の観察期間で、大腸がん発生率が高いという台湾からの2015年のコホート研究の論文(事象A)を話題にして、虫垂には免疫細胞が多いので、その免疫細胞を失うことによって悪玉菌が増え(事象B)、そのために大腸癌が増えるのでないかと考察し(事象C)、発酵性食品や食物繊維を食べましょうという放送があった。

 

まず、事象Bと事象Cを証明する人間を対象とした医学研究報告(科学的証拠)の提示を求める。

あるのであれば、きちんと証拠を示したうえでの番組進行が必要である。

 

事象Aは、以下の論文である。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4339380/

PLoS One. 2015; 10(2): e0118411.

Association between Appendectomy and Subsequent Colorectal Cancer Development: An Asian Population Study

 

まず、問題なのは、この研究で虫垂切除をした人と比較された群は、虫垂炎でありながら虫垂手術をしなかった人ではなく、研究で定義されているのは、虫垂切除患者と比較するために、男女比、年齢層、糖尿病のリスク、高脂血症のリスク、高血圧のリスクが同じ集団を設定したものであり、これは、単に虫垂を切除していない人(people who did not appendectomy)である。しかるに、番組では、あたかも虫垂炎であっても手術しなかった人のような印象を与える内容であった。

この論文では、腸内フローラのバランスについての考察はなく(考察はバイオフイルムの概念である)、癌と関係が問われているフソバクテリウムと虫垂炎の関係を考察している。そして、重要なことは、以下の文である。

It is not clear whether the cancer risk in this period is associated with appendicitis or is associated with the impaired colon microbiota because of appendectomy.

結腸直腸癌の発生率は、虫垂切除術を受けた患者の3.5年間のフォローアップ期間内に高いことに注意することが重要である。この時期のがんリスクが虫垂炎と関連しているのか、虫垂切除術のために結腸の微生物叢障害が伴うのかは明らかではない。

 

つまり、著者らは虫垂炎の手術が影響していると断言しているのではなく、そもそも、虫垂炎を引き起こすような免疫異常がベースにあるのかもしれないと考察しているのである。

 

しかし、問題は、それだけではない。虫垂炎切除を受けた集団では、大腸腺腫を有する率が若干ではあるが高いのである。そして、この論文では、その後に発見されたという大腸癌の組織診断だけではなく、そのステージすら不明なのである。であるから、ごく初期で、死亡率に影響しない腺腫内癌を対象としている可能性も否定できない。

 

また、番組では、虫垂の免疫細胞が癌を予防するかのように放送されていたが、その時に示されたのはリンパ濾胞である。しかし、リンパ濾胞は、大腸に1センチ平方3個存在する。

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(著:宇野良治ら. 大腸内視鏡の診かた. 杏林書院)

要するに、大腸に山ほどあるのである。確かに、虫垂炎ではリンパ濾胞が増加するが、増加するのは炎症のためである。

 

さらに、同じ著者らは、同じ雑誌で同年、虫垂炎手術と大腸がん以外の癌との関係もあると報告している。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25915658

PLoS One. 2015 Apr 27;10(4):e0122725. doi: 10.1371/journal.pone.0122725. eCollection 2015.

Appendicitis as an early manifestation of subsequent malignancy: an asian population study.

そして、虫垂炎手術患者では、リンパ腫や白血病、女性では卵巣、子宮がんが多いと報告している。

その原因として、単に大腸内視鏡検査を受けた人と違って、虫垂炎手術の人は、確定診断(虫垂癌除外を含め)や術前診断のために、腫瘍マーカーを含めた詳細な血液検査や腹部超音波検査、腹部CTなどを受けているはずであり、そもそもバイアスがかかっている可能性がある。要するに、検査すれば多くの癌が発見されるということだでだけの可能性が否定できないのである。


であるから、

虫垂炎の手術に対して、不安を抱く必要は全くなく、
また、発酵性食品や食物繊維については、
そもそも、論文の著者らは考察してもいないことを知るべきである。

また、食物繊維や発酵食品で便秘を予防できるというのは、高度な便秘でない人での話であり、
低フォドマップ食の概念では、ガスが増加するために、症状が悪化することは何度も述べた。