Office Uno Column: Yoshiharu Uno, MD, PhD

 
 

中国の研究

最近、中国では急激にアルコール摂取が増加し、2002年から2007年の5年間での消費量は男性では2倍以上、女性は6倍以上に増加し、中国の500万人がアルコール常習者で、その平均は141.04gであるという。

この量は、すでに脳がグルコースを活用できなくなる量であり、その後の脳障害が懸念される。

世界的に、アルコールによる人体への悪影響は、アルコール依存症や精神障害だけでなく、最も懸念されているのが発癌との関係である。

 

2011年の中国のメタ分析の研究によれば、アルコールと関係していた癌は、食道癌(オッズ比:1.79)、胃癌(オッズ比:1.56)、肝細胞がん(オッズ比:1.21)、鼻咽頭がん(オッズ比:1.71 、口腔内癌(オッズ比:1.71であった。

 Li Y, Yang H, Cao J.

Association between alcohol consumption and cancers in the Chinese population--a systematic review and meta-analysis.

PLoS One. 2011 Apr 15;6(4):e18776. 

http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0018776


このオッズ比はどれくらいか?という参考のために、韓国のデータを記すと、胃癌全体でのピロリ菌のオッズ比は1.79である。

 

1図1

Helicobacter pylori Infection and Risk of Gastric Cancer in Korea: A http://jpmph.org/journal/view.php?number=1876Quantitative Systematic Review

 

 

つまり、中国でお金をかけてピロリ菌を除菌するよりも、アルコールを制限した方が胃癌に対してcost effectiveかもしれない。

 

 

食道癌とアルコール摂取

同じく中国からの報告であるが、31の症例対照研究をまとめたデータでは、食道がんは明らかにアルコール摂取量と関係している。

Tingting Zhao, et al. Onco Targets Ther. 2015;8:649-659.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4376259/

2図1

食道癌の予防には、アルコールの制限が必要である。

 

ニュージーランドの研究

2016年、ニュージーランドからアルコールによって7つの癌が増加することが報告された。
これは、結構、最近、ネット上で話題となった。 

Jennie Connor. Alcohol consumptiom as a cause of cancer. Addiction.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/add.13477/full

それによれば、アルコールは中咽頭、喉頭、食道、肝臓、結腸、直腸および乳房のがんの原因となると報告された。

アルコールはまた、皮膚、前立腺癌および膵臓癌を引き起こす可能性が高いことも示唆している。

https://www.theguardian.com/society/2016/jul/22/alcohol-direct-cause-seven-forms-of-cancer-study

 

日本でのアルコール消費量と癌死亡率の関係

都道府県別の癌死亡率と都道府県別アルコール消費量の関係で最も関係の強いのは食道癌である。つぎに、口腔咽頭がんであった。大腸癌では、結腸癌よりも直腸癌とアルコール摂取量に関係があった。

(宇野コラムのオリジナルデータ:未発表)

 
 3図1


4図1


5図1



5図1


以上から、アルコールは、「死ぬ気で飲む」という自覚が必要である。

 
(「死ぬ気で飲んでいるんだ」とは、太宰治の「斜陽」にあった言葉です)



解決すべき課題
アルコールを禁止している宗教があるが、その教徒が多い国で、アルコールと関係している癌が少ないか?統計的に有意差がなければ、その理由は?