これまで、T細胞ががん細胞を攻撃し、消滅させるということがわかっていましたが、その機序には、細かな抑制作用が関与していることがわかってきました。ウイルスや細菌、あるいは癌細胞など、異物として認識するのが抗原提示細胞(樹状細胞:APCs)です。その細胞が直接的に異物を攻撃するT細胞に対し、情報を与え、攻撃するように命じます。この時、CTLA-4が結合するとT細胞の機能が働きません。そのため、このCTLA-4が結合しないように、抗CTLA-4抗体(イピリブマブ:商品名ヤーボイ)が開発されました。

また、T細胞の表面には、PD-1という物質があり、また、癌細胞には、T細胞の働きを抑えようとするPDL-1があり、この二つが結合すると、T細胞が癌細胞を攻撃しなくなります。そのため、それらを結合させないために、抗PO-1抗体(ニボルマブ)、抗POL-1抗体が開発されました。このような抗体の治療薬を「免疫チェックポイント阻害剤」といいます。

 

(参考:https://www.immunotherapy.jp/column/009.html

 

しかし、CTLA-4PD-1, PDL-1以外でも、T細胞の機能を抑制する物質が発見されています。

 

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4884396/

Current status and perspectives in translational biomarker research for PD-1/PD-L1 immune checkpoint blockade therapy

J Hematol Oncol. 2016; 9: 47.

Published online 2016 May 27. doi:  10.1186/s13045-016-0277-y

 

11


上の図の赤い文字が、T細胞の機能を抑制(ブレーキ)する物質です。

CTLA-4PD-1, PDL-1以外に、TIM3LAG-3BTLATIGITが記されています。

例えば、TIM3に関しては、以下のような記事があります。

 

http://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/263

樹状細胞が作り出すTIM-3分子が、 抗がん剤耐性の鍵をにぎっていた!

20121011

北海道大学 遺伝子病制御研究所 附属感染癌研究センター
地主 将久 准教授

化学療法の発展により、ある程度進行したがんでも長期間生存することが可能になってきている。ただし、はじめはよく効いた抗がん剤でも、次第に効かなくなってしまう問題が残されている。このほど、北海道大学 遺伝子病制御研究所の地主将久 准教授らは、樹状細胞が出す「ある分子」が、抗がん剤耐性の獲得に関与していることを突き止めた。

地主准教授は、消化器内科の臨床医として、抗がん剤による治療を専門にしてきた。「抗がん剤耐性に至る症例を多数、目の当たりにしてきたことで、耐性を獲得する分子メカニズムの解明にも取り組みたいと考え、基礎研究を始めることにしました」。そう話す地主教授はまず、がん細胞が免疫機能を抑制するしくみについて、検討しはじめた。

地主准教授が着目したのは、細胞のがん化やHIV感染などによって発現レベルが上がり、ガレクチン-9というタンパク質と結合することでリンパ球の細胞死を誘導することが知られていたTIM-3という分子。TIM-3は抗がん活性の発動に重要な樹状細胞においても発現することがわかっていたが、その機能は未解明だった。「TIM-3が樹状細胞のがん細胞に対する免疫応答性を変化させていると考え、網羅的な解析を始めることにしました」と地主准教授。

樹状細胞は、病原体やがん細胞などを「異物」と認識し、自然免疫を発動させるための強力な抗原提示細胞として機能する。一方で、「自然免疫による抗がん活性が高いほど、抗がん剤による治療効果が得られること」や、「抗がん活性は、がん細胞が作り出す『さまざまな因子』によって抑制され、この因子ががん細胞の活性化に寄与することもあること」などがわかってきた。

地主准教授はまず、がん組織に存在する樹状細胞では、TIM-3の発現が顕著に増強されていることを突き止めた。「そのうえで、樹状細胞を欠損したマウスやTIM-3遺伝子を欠損したマウスを対象に、自然免疫による抗がん活性と、抗がん剤による抗がん活性について調べ、結果を分子レベルで検証してみました」と地主准教授。

得られた成果は、驚くべきものだった。樹状細胞が自然免疫による抗がん活性を発揮するには、自らのToll様受容体などに「がん細胞由来の核酸」を結合させなければならない。ところが、TIM-3は、結合性をもつはずのガレクチン-9ではなく、HMGB1という別の因子と結合することで、HMGB1と「がん細胞由来の核酸」の結合を妨げ、結果として自然免疫受容体と「がん細胞由来の核酸」の結合を阻害していることがわかった。

さらに地主准教授らは、マウスの大腸がんや肺がんにTIM-3阻害剤を用いると、抗がん剤への耐性が劇的に改善されることも見いだした。地主准教授は「私たちは、自然免疫活性を介した抗がん作用にブレーキをかけるしくみを世界ではじめて解明できました。がん細胞は周辺の樹状細胞を利用し、TIM-3遺伝子を誘導させることで自らが増殖しやすい微小環境を整えていたのです」としたうえで、「このしくみを逆手にとってTIM-3の発現をうまく阻害できれば、がん治療の効果を大幅に改善できるようになるでしょう」と話す。

実はごく最近、TIM-3と同じように、がん組織中のTリンパ球で誘導され、その活性抑制に関わるとされる「PD-1」という分子のヒト阻害抗体が開発され、悪性黒色腫、肺非小細胞がん、腎細胞がん患者の約3割で腫瘍抑制効果を発揮したとの報告がなされた。「同じ手法で、TIM-3の阻害抗体の開発もすでに始まっているようです。TIM-3Tリンパ球のみならず、私たちが報告したように樹状細胞の機能をも抑制しています。また、がん幹細胞でも発現が高く、がんの増殖活性の増強に寄与しているとの報告もあります。これらのことは、TIM-3阻害抗体がPD-1阻害抗体よりも強い抗がん効果と、高いがん特異性を発揮することを示唆しているといえます」と地主准教授。

今後は、樹状細胞以外のマクロファージ、好中球、単球などのミエロイド細胞についても、がん細胞との相互作用や抗がん活性制御のしくみを解明し、より効果的ながん治療の創出につなげたいとの意欲をみせる地主准教授。毎年、60万人が発症し、30万人以上が死亡し、日本の国民病と化しているがん。その進行を食い止めるべく、地道な研究の日々が続く。

西村尚子 サイエンスライタ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

また、図の緑色の文字は、刺激を与える物質です。

 

PD-1抗体での薬剤費用が月200万以上ですが、

CTLA-4抗体では、月300万以上で、1サイクルで1300万以上という情報もあります。

http://cell-medicine.com/topics/2016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AB%E5%B0%8E%E5%85%A5%E4%BA%88%E5%AE%9A%E3%81%AE%E3%80%8C%E6%82%A3%E8%80%85%E7%94%B3%E5%87%BA%E7%99%82%E9%A4%8A%EF%BC%88%E4%BB%AE%E7%A7%B0%EF%BC%89%E3%80%8D%E5%88%B6/

 

これらの治療は、高額な薬剤を一旦病院が購入しなければならず、治療途中で終了した場合などに高額な在庫を抱えるリスクがあり、一般病院まで普及することは困難でしょう。

しかし、抗TIM-3抗体などの新薬も期待でき、また、

今後、これらの組み合わせによる癌免疫療法が体系化、つまり、多種少量による短期間で安価な治療法の開発が望まれます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<追記>

 

20165月における、薬品の開発状況は以下です。

 

(文献)J Hematol Oncol. 2016; 9: 47.

Published online 2016 May 27. doi:  10.1186/s13045-016-0277-y

11図1

日本は、小野薬品のPD-1の一種類の薬だけです。
アストラセネカ(英国)、メルク(ドイツ)、ブリストル・マイヤーズ(米国)が目立ちます。
そして、米国FDAの承認の スピードも加速しているようです。