オリゴ糖が乳糖不耐症に有効という謎の論文の検証
2013年、米国の医師とリッター医薬品会社の社員の論文が報告された。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3878758/
Savaiano DA, Ritter AJ,
Klaenhammer TR, James GM, Longcore AT, Chandler JR, Walker WA, Foyt HL.
Nutr J. 2013 Dec 13;12:160. doi: 10.1186/1475-2891-12-160.
この研究は全てリッター医薬品会社により資金援助され、リッター社のRP-G28というガラクトオリゴ糖を摂取すれば、乳糖不耐症の症状が軽減するという内容である。
研究の目的は米国の80万人の乳糖不耐症の患者は、乳糖が入った乳製品を摂取しないように指導されるが、それにより、骨粗しょう症が増加する懸念があり、カルシウムのサプリは骨折や骨密度増加には期待できないことから、
RP-G28で乳糖不耐症の症状を軽減できるかが検討された。
具体的には、
RP-G28群28人とプラセボ群28人が比較された。
まず、その結果から見てみよう。
試験前に2つのグループに対し、乳糖25gを飲用させ、それによる水素呼気量と症状をチェックし、その後、RP-G28とプラセボを35日間服用させ、36日目に、再度、乳糖25gを飲用させ、それによる水素呼気量と症状をチェックして比較するという方法であった。
その結果、
腹部膨満は差がなく、下痢はプラセボ群が改善した。しかし、腹痛はRP-G28群で減少した。
そして、RP-G28を継続させた11人では、66日目に腹痛があるのは2人に減少した。
一見、すばらしい結果である。
オリゴ糖は、乳糖とともに高FODMAP食であり、オリゴ糖を摂取することは、乳糖による乳糖不耐症状を緩和するという、低FODMAP食推進者の私にとっては、驚くべき結果である。
ということで、この論文を検証する。
まず、症状の改善があったとしても、腹痛だけであり、下痢はプラセボより多い。
そして、呼気テスト結果をみてみる。
まず、試験開始前のデータである。
ほとんど変らない。
そして、36日後の結果が以下である。RP-G28の方が、ガス発生が少ないようにみえる。
プラセボでは2時間と4時間が高い。
しかしである。
プラセボ群だけをみてみる。
プラセボ投与前より、投与後の方が2時間と4時間で明らかに高い。つまり、RP-G28とプラセボの差は、プラセボ群の36日後に、呼気水素が増加しやすかったことを反映している。
本来、呼気水素に影響を与えないプラセボであれば、前後に変化はないはずである。
そこで、プラセボは何かと調べると、コーンシロップであった。
コーンシロップは、日本で言う異性化糖であり、高FODMAPの果糖成分が含有される。
乳糖不耐症では果糖不耐症も併発していることが多いので、プラセボの方が悪化することは研究の前に予想される。
以上から、この研究は、果糖とオリゴ糖を長期連用した後の乳糖負荷試験の比較ということになる。
その結果、どちらも、呼気水素が症状を激減せるほどの影響がなかったが、果糖では乳糖不耐症を悪化させる可能性があるということを意味する。
そして、それらを長期に摂取して、乳糖を加えれば、果糖では腹痛を生じやすく、オリゴ糖では下痢になりやすい。
では、なぜ、オリゴ糖を摂取していれば、乳糖で腹痛が少なくなるのかであるが、そもそも、オリゴ糖の発酵で慢性的にガスが多い状態を経験するため、乳糖の発酵が気にならなくなるためかもしれない。
しかし、そのように我慢できたのは、28人中11人(39%)であったということなのかもしれない。
そもそも、この研究は過敏性腸症候群を対象から除外しているが、高FODMAP食の概念では、乳糖不耐症も過敏性腸症候群に包括される。つまり、この研究では過敏性腸症候群の症状のない乳糖不耐症を対象としているが、それが多くの乳糖不耐症を示すものかが、前提としての疑問である。たとえ、有効であったとしても、過敏性腸症候群のない乳糖不耐症に限定されるということしか言えないのである。
つまり、広く乳糖不耐症に有効とするならば、過敏性腸症候群の症状を有する乳糖不耐症を対象として、プラセボを低フォドマップ(グルコースなど)として、再検討する必要があると思われる。 その場合でも、SIBOを合併していれば、結果が複雑になるので、SIBOは除外すべきであろう。




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