これまで、IBSで消化管のガスを計測した研究は以下です。
<論文1 >
Koide A, Yamaguchi T, Odaka T, et al. Quantitative
analysis of bowel gas using plain abdominal radiograph in patients with
irritable bowel syndrome. Am J Gastroenterol 2000; 95:
1735-41.
2000年、日本の千葉大学からの報告で、30人のIBS患者と30人のコントロールを比較した研究。全員に腹部単純X線写真を朝食前に撮影し、その画面でガスをトレースして、そのトレースされた領域の画素数が計算された。その結果、IBSで有意にガス量が多く、2か月後に同様に同じ方法で測定し、再現性が得られた。
<論文2>
Morken MH, Berstad AE,
Nysaeter G, et al. Intestinal gas in plain abdominal radiographs does not
correlate with symptoms after lactulose challenge. Eur J Gastroenterol Hepatol
2007; 19: 589-93.
2007年、ノルウエーからの報告。50人の連続する患者に10gのラクツロースによるラクツロース水素呼気テスト(LHBT)を行い、その直後(180分間計測後)に腹部単純X線写真を撮影した。ガス量は2000年の千葉大の方法と同じように計測した。その結果、IBS症状は呼気テストの結果と相関しており、ガスの量とは相関がみられなかった。
<論文3>
Youn YH, Park JS, Jahng
JH, et al. Relationships among the lactulose breath test, intestinal gas
volume, and gastrointestinal symptoms in patients with irritable bowel
syndrome. Dig Dis Sci 2011; 56: 2059-66.
2011年、韓国からの報告。84人のIBS患者、24人の機能性腸疾患、25人の健常者を対象として、ラクツロース水素呼気テスト(LHBT)が行われた。ガス量は2000年の千葉大学の方法と同様に呼気テストの前の朝の絶食時に撮影され、同じようにガス量が測定された。その結果、LHBT陽性にガス量が有意に多く、また、ガス量と症状と相関があった。
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以上の研究は、全て当日の朝、あるいはラクツロース飲用後180分の試験直後に1日1度だけ撮影されたもので、どのように大腸ガスが増加するのかは不明でした。また、小腸ガスの増加については検討されていませんでした。継時的なガス量の変化は、MRIで行われており、それは以下の論文です。
<論文4>
Savarino E, Savarino V, Fox M, Di Leo G, Furnari M, Marabotto E, Gemignani L, Bruzzone L, Moscatelli A, De Cassan C, Sardanelli F, Sconfienza LM. Measurement of oro-caecal transit time by magnetic resonance imaging.
Eur Radiol. 2015
Jun; 25(6):1579-87.

2015年1月、イタリアからの報告。28人の正常なボランティアが対象。10gのラクツロースを服用後、呼気水素とMRIでの小腸ガス量を180分間測定した結果、呼気水素量と小腸のガス量増加は相関していた。
(注)この研究は、対象が正常者にもかかわらず、呼気水素でSIBOの特徴とされるダブルピークを11%に認めたこと、ダブルピークのある症例でガスのダブルピークがあったなどうか不明などの多くの問題があります。
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<論文5>
Murray K, Wilkinson-Smith
V, Hoad C, Costigan C, Cox E, Lam C, Marciani L, Gowland P, Spiller RC.
Differential effects of FODMAPs (fermentable oligo-, di-, mono-saccharides and
polyols) on small and large intestinal contents in healthy subjects shown by
MRI.
Am J Gastroenterol. 2014
Jan;109(1):110-9.
2014年、イギリスからの報告。大腸ガスと呼気水素量の関係が検討された。対象は17人の健常者。負荷されたのはラクツロースではなく、果糖とフルクタン(イヌリン)である。果糖40g飲用後では水素ガスの増加とともに大腸ガスは増えたが水素ガスや小腸水分(SBWC)が低下してきても大腸のガスは350分まで増加し続けた。

フルクタン(イヌリン)40gの飲用後の大腸ガスの量は350分まで呼気水素とパラレルに増加した。
また、小腸の直径からすれば、2時間程度が最も大きいが、小腸全体のガス量は測定されていない。しかし、大腸ガスは発酵物質飲用後の1時間後、つまり、理論上、大腸へ発酵物質が到達する前から徐々に増加し、250~300分まで増加するという結果である。

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以上であり、これまで、ラクツロースを含め発酵物質の飲用後の継時的な画像上でのガス量の継時的変化の研究は健常者の研究だけであり、IBSに対して研究されたことはありませんでした。
MRIは、水分の同定は容易であるが空気の同定は難しいため、MRIによるガスの定量研究は今後も期待できないところがあります。その意味もあって、MRIで水分量(SBWC)を測定した研究があります。
Ke J, Qi R, Liu C, Xu Q, Wang F, Zhang L, Lu G.
Neurogastroenterol Motil. 2015
Sep 25. doi: 10.1111/nmo.12692. [Epub ahead of print]

小腸の水分量は90分以内のピークがみられますが、試験のために飲んだ水分が小腸に移動し、吸収される状況を反映しているため、それがSIBOの影響とは言えません。
SIBOの症状の腹部膨満、腹痛は過剰なガスの産生の結果であり、SIBOで症状を来すほどに過剰な小腸ガスの増加過程を証明した報告はこれまでありませんでした。
(つづく)
http://www.scirp.org/Journal/PaperInformation.aspx?PaperID=61111


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