LHBTによるSIBO診断:それは明らかな論理的矛盾

 
SIBOのラクツロース呼気テスト診断の原理は二つの事から成り立っています。

(1)口から盲腸までの通過時間は90分以内である。

(2)小腸の菌が増加している部位で発酵によりガスが発生する。
 

しかし、以前の研究では盲腸への到達の定義が非常に曖昧なものでした。

Lu CL, Chen CY, Chang FY, et al. Characteristics of small bowel motility in patients with irritable bowel syndrome and normal humans: an Oriental study. Clin Sci (Lond) 1998; 95:165–9.

Ghoshal UC, Ghoshal U, Ayyagari A, et al. Tropical sprue is associated with contamination of small bowel with aerobic bacteria and reversible prolongation of orocecal transit time. J Gastroenterol Hepatol 2003; 18: 540–7.


 最近の精密な機器を用いた研究では、食物が小腸を通過する時間(口から盲腸まで)は、平均4.25時間とされています。さらに呼気テストで陽性を示す場合は、6.95時間に延長されることがわかりました。

Roland BC, Ciarleglio MM, Clarke JO, et al. Small Intestinal Transit Time is Delayed in Small Intestinal Bacterial Overgrowth. J Clin Gastroenterol 2014; 14: [Epub ahead of print]

そもそも90分以内で一旦反応が終わるということは、90分以内で、飲んだものが小腸を完全に通過しなければならないのに、少なくとも4時間はかかるということがわかり、90分以内のピークという理論が崩れているのです。

 
 何時間もの小腸発酵のなかで、ほんの初めのピークの意味は何なのでしょうか?

それについて、説明する図が以下です。

 11図1

つまり、最初のピークは小腸のなかでも、胃に近い十二指腸から空腸の細菌増殖を示すとするものです。

そして、十二指腸から空腸まで発酵してガスが増え、その後、回腸で発酵しない場合は、ガス量が減少して下降し、盲腸を通過後に再び発酵が生じてガスが増加してゆくという考えです。
 

これは、一見、正しいように思えます。
 

しかし、最大の矛盾があります。
 

SIBOの定義は、培養液のコロニー数が10個以上とされています。

そして、確かにその量は空腸まででは多い量です。しかし、SIBOがなくとも回腸ではその100倍以上の10個が存在します。(コロニー数は培養での数ですが、細菌の種類が限定されているので、この場合、コロニー数≒細菌数とみなされます)

以上から、理論的に、回腸に菌が増殖しない場合でも、空腸までの菌数が相対的に少なすぎるため、ピークをつくることなく、そのまま増加する筈です。つまり、小腸のはじまりの空腸や回腸に限局的に菌が増殖していたとしても、ピークを形成することはあり得ないということです。

22図1
 

良く考えてみれば、正常の回腸の100分の1しかない菌の発酵でSIBOの症状を来すという事は、実際にあり得ないのです。
よって、呼気テストによるSIBO診断の理論は完全に崩壊しています。
 

さらに、実際に培養と呼気テストを一緒に行った研究では、IBSとコントロールでは、培養されたコロニー数には差がなく、さらに、呼気テストではコントロールの方に陽性率が高いという結果も報告されています。

 33図1

では、この初期のピークは何を意味するのか?

 44図1

発酵増減による直接的影響よりも、考慮すべきは、酸塩基平衡による反応です。

人の血液に水素イオンが増加した場合、緩衝物質と結合して増加を防ぎます。また、酸塩基平衡機序によって補正機能が働きます。

水素イオンは重炭酸イオンと結合して重炭酸となり、さらに二酸化炭素と水に分解されます。つまり、発酵による水素ガス増加の初期に起こり、その生体の補正の影響が呼気水素の一時的低下なのかもしれません。しかし、これは仮説です。呼気テストで、一過性に低下がみられるのは、呼吸状態(過換気で水素ガス排泄量が増える)、あるいは腎臓から排泄されるための腎血流量、尿量に影響されているのかもしれません。

もし、そうだとすれば、30年以上研究されたこの分野の多くの研究を否定することになります。
その意味からすれば、私の考えは、誤りだと思いたい気持ちが強く、誤りあれば、それは公開します。

しかし、たとえ、ラクツロース酸素呼気テスト(LHBT)での診断方法は不確かとしても、
実際に、大量のガスが小腸に増加している症例、つまり、SIBO は少なくありません。 

 SIBO反転
このような小腸ガスは、どうして発生するのでしょうか?

実際に、ラクツロースを飲んで、小腸のガスが増えるのでしょうか?

そして、小腸にガスが増えるとすれば、いつ、どれくらいの量が増えるのでしょうか?
 
さらに、小腸にガスが増えず、大腸だけにガスが増える場合と、
ガスの増え方に違いはあるのでしょうか?

55図1


(つづく)


http://www.scirp.org/Journal/PaperInformation.aspx?PaperID=61111


 la tesi 2