<質問>

 

私もガスの多さに困っていて、一度抗生剤も使いました。 

そこで質問なのですが、先生はヨーグルトや腸内細菌のサプリなどは一切飲まない方がよいとお考えですか? 

抗生剤を飲んだ後、何らかの方法でしばらくはガスがたまらないように腸内の菌を整えることはできないのでしょうか?

 

 

<回答>

 

1.ヨーグルトについて

 ヨーグルトについては、「ヨーグルト信者」は世界中に存在しており、その人たちを否定する立場にはありません。プラセボ効果といって、効かない薬でも、効くと信じて飲めば、ある程度の効果が得られるからです。サプリメントも同じように思います。現在は、医学常識では否定されている民間療法が数多く存在しますが、何らかの民間療法を信じて行っている人を否定しようとは思いません。科学的に根拠があるとしているものでも、きちんとした論文を書いて、それが客観的に世界レベルの科学雑誌で認められ、さらに検証されることが本来必要ですが、信じることによって、健康になったと自分自身が思っていれば、それはそれでいいことかもしれません。

 私が、低フォドマップ食を信じている理由は、科学的(医学的)にその原理が正しいと理解出来て、そして、その有効性が証明されているからです。そして、その公表は正式に論文の形で客観的に審査され、さらに世界レベルの学会で議論されているからです。

 民間療法や古い医学常識は、時に、先進医学と全く逆の理論であることがあり、その場合は、つまり、新しい理論を展開するには、きちんと、正当性を示さねばなりません。その正当性が低フォドマップ食には存在するのです。そして、全く逆の理論のどこがおかしいのか理由を解析する必要もあります。

 しかし、一旦広がり、多くの人が正しいと思っていることを完全に否定することは、非常に困難です。

 社会主義と自由主義のように、それぞれいいところも悪いところもあり、医学についても、同じように思います。とにかく、人を長く生かせようと進歩した医学は、それが本当に人間にとって幸せなのか?という問題を生み出しています。


 話は、それましたが、

 大きく分ければ、

何かを食べれば(飲めば)健康になるという発想と、

何かを食べなければ(飲まねば)健康になるという、2つがあります。

経済的には何かを飲んだり食べたりする健康法は利潤を生みだします。

何かを食べるな、飲むな、という健康法は、経済的にはマイナスになります。

しかし、何かを制限して、健康にならなくても、

毒であっても、美味しい物をいっぱい食べて、人生を謳歌したいという人もいるでしょう。

低フォドマップ食に縛られて、

好きなものを食べられないことが不幸と感じるのであれば、そのような制限食はすべきではないでしょう。お腹が張ろうが、お腹が痛かろうが、下痢しようが、便秘しようが、好きなものを食べることを選ぶ人もいるでしょう。

 私が、医者をしていた頃、

「この治療をしなければ、死ぬかもしれない」

と言っても、「死んでも、しなければいけないことがある」と言って、治療を拒否して死んだ患者も経験しています。若かった私は、何度もその人の家に行って説得しましたが、結局死んでしまいました。でも、御家族の話では、患者さんは納得して死んだとのことでした。

以上のように、

私は、低フォドマップ食が有効である人であっても、自分の人生において何を望むかが重要だと思っています。IBSでも、普通に生活し、普通に外食し、普通にコンビニで買い物をして、それでもいい人はそれでいいと思います。理解したうえでの飲食で悪化した症状は自己責任であり、苦痛に耐える責任があります。

 しかし、本気で、症状を無くしたいと思うのであれば、頑張って欲しいと思っています。その人達のために、私は、極端な立場から発信しています。
 重要なことは、自分の症状を治そうとしていても、情報不足から、高フォドマップ食の乳糖やオリゴ糖を積極的に摂取している人を救済することです。すべてわかっていて、つまり、高フォドマップ食が症状を悪化させることを知っていて、知ったうえで摂取するのは、個人の自由です。しかし、知らずに、良くなろうとして摂取している人には教える必要があると思います。 

 

2.腸を整える

「腸を整える」という発想は、非常にグローバルな考えであり、曖昧な言葉です。腸がどういう状況であれば整った状況なのでしょうか?定義は曖昧といより、定義が出来ない言葉です。医学は、単純に、腸が痙攣していれば、痙攣を抑える。動かないのであれば、動かす。というものです。腸内細菌叢は、人それぞれで異なります。動物の世界、つまり自然界では、食べるものによって、それを消化することの出来る種だけが生き残るという法則があります。巨大なクジラは魚を食べずに、大量の水からプランクトンを得て生存しています。もし、世界中に高FODMAPしかなくなれば、何万年もかけて、人類はその環境に適応し、適応出来た人類だけが生き残るでしょう。もしかしたら、人類は、その方向進んでゆくのかもしれません。しかし、現在の人間は、まだ、その環境に適応していないために、高FODMAPで症状を来して苦しいと感じる人が少なくないのだと思います。つまり、腸を整えるということは、現在では、まだ、高FODMAPに適応できない人の腸内を適応できるようにすることかもしれません。しかし、人の一生の間では、そのようになることは無理かもしれません。
 ですから、「腸の菌を整える」ということは、 人それぞれで違うと思います。そして、全人類共通の絶対的な理想の腸内細菌叢のバランスというものはないと思います。実際に、アフリカの国の健康な人と、西欧の健康な人の腸内細菌叢のバランスは異なっています。また、乳糖不耐症の有病率も、国や民族によって異なります。また、日本人だけが海苔を分解して栄養として吸収することが出来ます。そのような異なる腸内細菌叢であっても、共通して、ガスや水分が増加する物質が高FODMAPです。
 

 

3.抗生剤後の症状を抑える

 IBSでの抗生剤の使用は、本来、IBSにSIBO(小腸内菌増殖症)を合併している人の小腸の菌を減少させる目的に始まりました。しかし、SIBOの合併率は5から75%と範囲が広く、この理論は疑問視されています。確かに、抗生剤で大腸の腸内細菌も抑制できますが、それは一時的なものです。低フォドマップ食は、どのような腸内細菌叢であっても、ガスを増やす発酵を抑制して、症状を抑えようというものです。ですから、発酵による症状を抑制しようとしたいのであれば、それを発生しない食材を制限することが基本です。
 高FODMAPを食べても、その発酵を抑制するような薬が開発されれば、症状はなくなるかもしれません。しかし、本来、腸内の発酵というものは、小腸をすり抜けて、栄養を吸収できなかった食品から栄養を吸収するための反応です。そのような自然な発酵反応を抑制することは、何らかの新たな副作用を引きおこす危険性もあると思います。