医療ジャーナリスト:宇野良治
「もっと、癌が早く見つかっていれば、助かったのに。。。」
「最近、癌でなくなる芸能人も多いので、検診は受けた方がいい」
とか、よく聞きます。
でも、必ずしもそうではないことがあります。
<Aさんのケース>
Aさんは、何の症状がありませんでしたが、癌の検診を申し込んでいました。どうせ、何も異常はないだろうと思い、ずっと前から計画していた海外旅行を検診結果の後に予定していました。しかし、検診の結果は、異常と出ました。
そのため、旅行をキャンセルして、病院を受診して、精密検査を受けました。その検査の結果、がんと診断され、手術と化学療法を受けました。そして、副作用で苦しみながら、亡くなりました。検診から死亡まで1年でした。
<Bさんのケース>
Bさんは、時々、自覚症状がありましたが、我慢できる程度だったので、ずっと前から計画していた海外旅行に行きました。旅行から帰ってくると、症状が強くなったので、病院を受診したところ、末期癌と告げられました。癌性疼痛の治療だけを受けて亡くなりました。病院受診から死亡まで3か月でした。
Aさんと、Bさん、どちらが幸せだったでしょうか?
一見、がんが見つかってから死亡までが、Aさんは1年、Bさんは3か月で、
Aさんの方が長生きしたように錯覚します。しかし、たとえ、どんな治療をしても効果のない癌の場合は、死期が同じであって、Aさんは、病院で治療を受け、苦しんだ期間が9か月長かったということになります。
このような、一見、検診が有効であったかのように思える期間を
リードタイム・バイアス(lead time bias)といいます。

Aさんは、癌が早く見つかってしまったために、旅行にもいけず、「病人でいる期間」が長かっただけということになります。Bさんは、旅行に行けて、苦しむ期間も短かったということになります。
たとえば、胃がんにも進行が緩やかで、1年間隔の検診でよく見つかる高分化腺癌は、ある程度進行してから(症状が出てから)癌が見つかっても、予後は悪くはありませんが、非常にスピードが速く、1年間隔の検診でチェックされにくい未分化癌は、見つかった時点で余命3ヶ月という場合もあります。
(これをレングス・バイアスといいます。)
http://canscreen.ncc.go.jp/kangae/kangae3.html
本来、検診では、予後が悪い癌を見つけたいところなのに、実際に発見される癌は、早く見つけても、数か月後に見つけても、あまり予後が変わらないものが多いのです。
ですから、「あの芸能人の癌を見逃したのは、どこの医者だ?」
というのが、よく、ネット記事にありますが、
その癌の組織は何だったのか?
はたして、どれくらい前に見つかっていれば延命できたのか?
どの時点で、見つかっても、どうしようもない癌だったのか?
それらを知ることが、意見を言う上で重要なのです。

コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。