本来、
胃瘻(経皮内視鏡的胃瘻:PEG)は、
小児の経口摂取不能の状況に対して開発されたものです。
その後、成人にも応用されましたが、交通事故や脳損傷などで、
一時的に経口摂取できない人が適応でした。
その前提は、その後に経口摂取が可能となることでした。
そして、
現在の日本では、認知症などの高齢者の経鼻栄養の代わりに行われていますが、
経口摂取が見込めない高齢者に胃瘻を行うことを積極的にすすめてきたのは、
世界的にみても日本だけです。
つまり、日本は、ある意味、高齢者の胃瘻の先進国ですが、
疑問が残ります。
高齢者の胃瘻は倫理的に正しいか?
高齢者の胃瘻は安全なのか?
高齢者は経鼻法よりも胃瘻を選択すべきなのか?
宇野コラムでは、経鼻チューブ挿入での事故について記していますが、
経鼻ではなく、胃瘻にすればそのような事故はなかったのではないか?
と思う人もいるでしょう。
それについて、
ずっと私自身も悩みましたが、それについて、過去に記しました。
2015年1月28日に掲載した記事を再掲載します。
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2015年1月28日掲載記事
原則的に80歳以上のPEGはすべきではないのか
<胃瘻自体の強度からみた提言>
著:宇野良治
過去の調査報告(2000年)から、
日本で胃瘻の癒着の乖離によると思われる死亡は1か月1件以上発生していると推察される。
それは、主に、腹腔内チューブ留置に気が付かず、
栄養剤を投与したための腹膜炎である。
経験的にそのようなケースは高齢者に多く、
特に、80歳以上ではPEGが危険であると感じているが、
その客観的証拠を提示する。
この資料は、PEG・在宅医療研究会の学術集 (2004年9月25日)で報告したものである。

(今回の引っ越しの準備中に発見した資料である)
ファイルがなくなったために、残っている紙をスキャンしたものなので、画像が悪い。
その時には、言及しなかったが、
胃瘻部分の癒着は70歳代でも脆弱であり、鮒田式固定具で、全周を癒着させても、その強度は癒着が乖離するぎりぎりの強さであり、
70歳以上のPEGの危険性を示唆するものである。
以上から、70~80歳以上の場合は、PEGはそれより若い人と比較して非常に危険であり、
特に80歳以上の場合、その癒着部の乖離は容易に起こり、
チューブの交換時に、
癒着の乖離から腹腔内にチューブが留置される危険性が、
常に存在することを知る必要がある。






















以上の結果は70歳代の場合である。
胃瘻の強度からみて、
70歳代であっても周囲(全周)に5mm幅の癒着が なければ、
チューブ交換は危険である。
そして、80歳以上、90歳以上では、
胃瘻の癒着自体が脆弱 であることは自明の理である。
経鼻チューブによる合併症の頻度よりも、
胃瘻のチューブ交換での危険性の方が高い可能性が存在する。
80歳以上では、以上のことを十分に認識したうえで施行するべきである。
60歳代以下のPEGのリスク≠70歳代以上のPEGのリスク
以上が前提である。
そのため、80歳以上のPEGについて説明する場合、
若年者のデータをもとにインフォームドコンセントを行うべきではない。
さらに、PEG造設時だけのリスクを話すのではなく、
その後、何度も繰り返されるチューブ交換では、
常に癒着が乖離する可能性があることを説明したうえで、
そのことに家族が納得した場合に限定してPEGを造設すべきである。
『経験的に。80歳代、90歳代でも、危険だった経験はないので、年令による差はない』
という医師がいるであろう。
しかし、
それは、単なる、運の良い「綱渡り」
なのかもしれないことを、
今回の資料は示しているのである。
総括・提案
l 70歳代でのPEGでは胃壁固定を全周に施行すべきである。
l その場合においても、チューブの形態によって、癒着の剥離を来す可能性がある。
l 80歳代以上では、癒着の脆弱性から、胃壁固定をしてもチューブ交換は常に危険である。
l 80歳代以上では、PEGより経鼻チューブ法が安全である可能性が高い。
l 80歳代以上ではチューブ交換での危険性を考慮したえうで、PEGを造設すべきである。
l 医師は家族にPEGが安全であると安易に説明すべきではない。問題は造設時ではなく、その後であることを説明すべきである。
PEGチューブの交換後は、
X線造影等の客観的方法で、
その位置を確認しなければならない。
(在宅であっても)
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