米国消化器病学会誌でプレバイオティクスに警鐘
<序章>
このコラムの前の宇野コラムで、
2012年8月23日の記事に、
「乳酸菌は便秘に効くか?」
というタイトルで記事を書いた。
その内容は以下である。
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結論から言うと便秘外来通院中の患者さんの6~7割を対象にヨーグルトを含む発酵食品を制限するように指導している.
その理由は以下である.
R1ヨーグルトを食べるとインフルエンザにならないという宣伝的な報道のためにR1が大量に売れて,コンビニからR1が消えたというR1事件があった.
そもそも,その研究は,R1を無料で配布された子供の集団でインフルエンザの感染が少なかったというものであるが,与えられた子供たちは,予防効果のあるものであると思い込んでいたであろうことと,そのためにもし自分がインフルエンザになると脱落者になって,いじめに合うくらいの気持ちになったかもしれない.このように研究に影響を与える因子をバイアスというが,そのようなバイアスをなくすために実験される側がわからないようにするように工夫しなければならない.
たとえば,
Probiotic Yogurt No Help for Kids' Constipation(Published May 24, 2011))という論文がある.
この論文では159人の子供に対して,子供たちが成分を知らせないで,腸内細菌に影響しない乳製品と腸内細菌に影響する乳製品を与えたというものである.その結果は腸内細菌に影響する乳製品は便秘の改善に効果なかったというものであった.
(http://www.foxnews.com/health/2011/05/24/probiotic-yogurt-help-kids-constipation/)
ほかにも
ヨーグルトを食べても腸内細菌に影響を与えないという報告はワシントン大学からも報告された.この研究では双子で実験しがヨーグルトには効果がないというものであった.
著者:McNulty NP, Yatsunenko T, Hsiao A, Faith JJ, Muegge BD, Goodman AL,
Henrissat B, Oozeer R, Cools-Portier S, Gobert G, Chervaux C, Knights D,
Lozupone CA, Knight R, Duncan AE, Bain JR, Muehlbauer MJ, Newgard CB, Heath AC,
Gordon JI.
論文タイトル:The impact of a consortium of fermented milk
strains on the gut microbiome of gnotobiotic mice and monozygotic twins.
雑誌名: Sci Transl Med. 2011 Oct 26;3(106):106ra106.
はっきりとした効果が得られてないにもかかわらず,流行のように効果があると宣伝することをフードファディズムというが,乳酸菌はフードファディズムではないなのか?という人もいる.
これはある意味,科学と言うよりは世界中にヨーグルト信者がいるので,世界的な宗教のようなものなのかもしれない.
過敏性腸症候群(中山書店,佐々木大輔編集)の
30頁にプロバイオティクスのタイトルに以下の文章がある.
「以上のように,さまざまな食品群が腸管症状を引き起こすことが報告されているが,今のところ明らかなエビデンスのあるものは多くなく,また患者によって
個人差が多岐にわたるため,適切な食事摂取を指導するのは困難である.さらなる検討のうえにエビデンスのある食事に対する治療方針の確立が望まれるが,現 状では一つ一つ検証しながら注意深く指導を行っていく必要がある.」
以上から,
私の便秘外来では乳酸菌を取り過ぎないように指導している.
しかし,私が最も懸念しているのは,
乳酸菌と食物繊維の組み合わせによるガスの発生なのである.
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以上が2年前の記事である。
なお、
最後の、
「しかし,私が最も懸念しているのは,
乳酸菌と食物繊維の組み合わせによるガスの発生なのである.」
というのは、
現在、世界的にフォドマップFODMAPという概念で広がっていることは、
このコラムを読んでいる人は御存じであろう。
フォドマップが正しいければ、
善玉菌、悪玉菌の概念では、便秘は治らなないのである。
2年前の予想通りに世界は動いている。
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では、本題に入る。
消化器病学の医学雑誌では世界で一番権威のある「Gastroenterology」は米国消化器病学会の機関誌である。
今年、2014年5月号において、日本でいう「善玉菌、悪玉菌」、世界的にはプロバイオティクス(直接菌を与えて菌群の種類を変更)、プレバイオティクス(ビフィズス菌などを間接的に増やすための菌の栄養を与えてある種の増やす)が、過敏性腸症候群(IBS)で効果があるという研究を疑問視する内容のレビューが公表された。
論文の著者はアイルランドと米国の大学教授である。
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IBSおよびIBDに対する微生物操作―挑戦と論争
<要旨>
炎症性腸疾患(IBD)に対し微生物叢操作の治療するためには説得力のある根拠が必要である。IBDに対するプロバイオティクスは動物モデルでの腸の炎症の研究において有望な結果を得たにもかかわらず、ヒトでの試験では絶望的な結果であった。IBDとは対照的に、過敏性腸症候群(IBS)での微生物叢の役割は、ごく最近になって検討され、初期段階の結果は有望であった。消費者は、製薬会社に対し、慢性的疾患に対処する、より安全な長期戦略を求めている。
我々は、IBDとIBSの治療のプロバイオティクス、プレバイオティクスの理論的根拠を評価し、現在の概念が誇張されているか、または単純にレベルの低い研究かどうかを議論する。誇張された特許請求や非現実的な期待をしていないか?微生物の用語や技術だけでなく、患者間の相違点と、これらの疾患の異質性と難しさは、IBDとIBSのための微生物ベースの治療法を開発する上で新たな課題を提起している。
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<論文中の主要な警鐘的文章>
細菌とIBSの直接的な関係は小腸内細菌異常増殖症(SIBO)およびIBSとの間で提案されている。SIBOは、通常、腸の解剖学的構造の変更、腸運動障害、または胃酸分泌を抑制された患者において検出されるが、これらの因子がない場合、胃腸症状の発症は、特にIBS様症状に関与しているが、IBSにおける小腸細菌異常増殖の状態については多くの議論がなされている。いくつかの研究は、最近、IBSを有する成人および小児の糞便および結腸粘膜の細菌叢の量的および質的な変化とIBSが関係するという報告があったが、これらの研究は、ほとんどの部分は、対象サイズが小さく、また、食事などの環境要因でコントロールできていない。 それらは、腸内細菌叢とIBSの症状の間の一貫性のない結果をしめすものである。
一方で、IBSの患者では、低レベルの微生物叢が免疫活性化状態を引き起こすと考えられ、微生物や粘膜免疫応答の変化は下痢型IBSと関連あるとされる。 微生物叢による発酵の変化は、ガスの体積に影響を及ぼし、微生物叢による胆汁酸の脱抱合の調節の変化は、糞便の体積に影響を及ぼすことが示されている。臨床医は、IBSおよび関連疾患を有する患者の腸内細菌叢は、抗生物質、プレバイオティクス、プロバイオティクスで変化することを理解する必要がある。
これまでのところ、リファキシミンの抗生物質によって腸内細菌を減少させることが、わずかではあるが、一貫した効果をIBSの患者で示されている。
つまり、微生物の変化させることが臨床上の利益を説明するには至っていない。
IBSに微生物を介入させる治療法が提案されているが、その根拠はIBDにおけるよりも弱い。
プロバイオティクスは、腸感染、損なわれた腸のバリア機能、内臓過敏症、運動障害、異常な脳腸応答、脳機能、ローカルおよび全身性免疫応答などのIBSの病態生理に関係要因にプラスの効果を持つという説である。
しかし、これらの知見のいくつかは、複製され、さらにはヒトの研究で扱われてきた。経口投与によるプロバイオティクスが、結腸通過時間を加速または減速させ、脳の活性化に影響を与え、さらにサイトカインの循環を変更せるという、いくつかの報告がなされている。小児期に感情的および物理的な外傷は、IBSの危険因子であり、ラットの研究からの知見は、このようなストレス要因が微生物に影響を与えることができることが示されているが、この実験モデルでは、新生児期における短期間の広域スペクトル抗生物質への暴露によって、その後、死亡まで内臓過敏となった。急性細菌またはウイルス性胃腸炎のエピソードの後にIBを発症したとする報告は、食事、代謝、免疫機能、対処、またはストレス応答との関係は明らかではない。
IBDとIBSで最も多い実験的なモデルは、単相的であり、再発および寛解を伴う多相性の人間での障害を再現してはいない。IBSの動物モデルはさらに問題であり、主に個々の病態生理学的な側面(例えば、内臓過敏、運動不全)、または原因となる因子(例えば、ストレス、腸感染症)に焦点を当ててきた。IBDにおける炎症のバイオマーカーとは対照的に、IBSは、アクティビティの目的のマーカーを欠いている。つまり、IBSの動物モデルからの結果を人間に適応させることは危険である。
IBSの研究の分野において主要な問題は、多くの研究の質の低さである。
これらの研究は、小集団、エンドポイントが変更され、また、異なる生物を含んでいた。IBSの患者のためのプロバイオティクスのほとんどの研究は、IBSサブタイプ間で効果を比較するか、サブグループ解析のために十分な力を持っていなかった。
この図は、同論文で、プロバイオティクス、プレバイオティクスをとりまく社会的問題を示したものである。
この論文の最後の箇条書きは、最近見た論文のなかでも強烈である。
What Clinicians Should Know「臨床医が知っておくべきこと」として、
下記を箇条書きで記している。
すべてのプロバイオティクスは同じではない。それらは個々に検討されるべきであり、同種を同じく考えてはいけない。
プレバイオティクスやプロバイオティクスの選択は、検討中の適応症に関する証拠に基づくべきである。
説得力のある証拠が存在しない場合、消費者は品質管理の変動に関する懸念を相殺するために信頼できる供給業者を選択してください。
プレバイオティクスとプロバイオティクスの効果は限られています。
それらはサプリメントではなく、従来の治療にかわる代替手段または代替治療でもない。主な生理学の変更は期待されないに違いない。また、それらは健康な人において望ましくないだろう。
プロバイオティクスは、通常、成人の腸にコロニーを形成しないため、継続的な効果のために無期限摂取されることに注意する必要がある。
プロバイオティクスの組み合わせは、必ずしも相加的または相乗的な効果を持っていない。
異なる薬剤は、競合する可能性がある。薬と同様に、混合物の個々の構成要素は、それらの相互作用を決定するために、検証だけでなく、研究を必要とする。
プロバイオティクスとプレバイオティクスの異なる用量の効果はヒトで慎重に検討されていない。
プロバイオティクスとプレバイオティクスは、長期投与での安全性を謳っているが、まだ他の治療薬と同様のリスクがあり、警戒が必要とされるである。
特に急性膵炎、中心静脈ライン、または免疫不全の患者に注意すべきと勧告する。
プロバイオティック剤の現在の世代のいずれも、クローン病の治療において有効性を示さなかった結果は、潰瘍性大腸炎、特に回腸嚢炎とのそれらの患者でも同様であろう。
プロバイオティクスは、IBSの患者で有効であるという報告があるが、その使用は科学的根拠に基づいた医療の原則に基づくべきである。
(宇野良治)
追記:医学のTV番組で、何を信じればいいか?
わからなくなった時の判断法
「○○すればいい」「○○食べればいい」というのは嘘で、
「○○しない方がいい」「○○食べない方がいい」というのが真実である確率が高い。

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